Download presentation
Presentation is loading. Please wait.
1
第一回 教育基本法と生涯学習・社会教育 公共サービス論(2014.10.6)
第一回 教育基本法と生涯学習・社会教育 ○図書館職員の皆さんが普段図書館で働いていて身近な法律といえば、公立図書館の方ですと、図書館法や施行規則や関連する告示や通知、条例や図書館の館則等があるかと思います。その上位にある社会教育法や教育基本法、最高位にある憲法まで日々の業務で意識されることはそう多くないかもしれませんが、こうした法律には、図書館という言葉が必ずしも規定されていなくても、図書館が社会に求められる役割や機能と深く関わる内容も多いのです。
2
<図書館と関係法令> 日本国憲法 教育基本法(昭和22年) 社会教育法(昭和24年) 図書館法(昭和25年) 博物館法(昭和26年) 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(平成2年) 図書館と関係法令の一部をお示しすると、憲法とこういった法律があります。
3
教育基本法、社会教育法、関連する審議会答申等の内容を確認し、これからの図書館に求められる役割を考えます。
本日の講義 教育基本法、社会教育法、関連する審議会答申等の内容を確認し、これからの図書館に求められる役割を考えます。 〇本日の講義では、教育の根本法である教育基本法と社会教育法について解説するとともに、教育振興基本計画や近年の中央審議会の答申などで図書館に関連する部分を取り上げ、法律に規定されていることや答申などで指摘されていることをご理解いただくことで、あらためて今後の図書館に求められる役割は何か、と考えていただく参考にしていただきたいと思っております。主要な法律は、司書課程で既に学ばれていると思いますが、教育基本法は平成18年に改正され、社会教育法は平成20年に改正されておりますので、本講義では、改正により新たに盛り込まれた内容に特に留意しながら、図書館に関係する部分を中心に確認したいと思います。
4
本日の講義 1 教育基本法について (1)教育基本法改正の経緯 (2)教育基本法の構成 (3)図書館関連の主な規定 2 中央教育審議会答申と教育振興基本計画について 3 社会教育法について
5
1 教育基本法について (平成18年12月22日法律第120号) ※旧法は昭和22年3月31日制定
1 教育基本法について (平成18年12月22日法律第120号) ※旧法は昭和22年3月31日制定
6
(1) 教育基本法の改正について ①(旧)教育基本法制定の経緯 「教育ニ関スル勅語」発布(明治23年10月30日)
(1) 教育基本法の改正について ①(旧)教育基本法制定の経緯 「教育ニ関スル勅語」発布(明治23年10月30日) 終戦(昭和20年8月15日) 日本国憲法の公布(昭和21年11月3日) 施行(昭和22年5月3日) 1.教育基本法制定の経緯 〇もともと教育基本法が一番最初に公布・施行されたのは、昭和22年3月ですが、その後、時代の変化等を踏まえて平成18年に全面的に改正されたものが、今の教育基本法です。はじめに、教育基本法ができるまで、平成18年に改正された経緯と改正の内容について、簡単に見てから、規定の内容を見ていきます。 ○戦前は、教育勅語という、明治23年に、「天皇直々のお言葉」として発布(はっぷ)された。戦前・戦中のおよそ半世紀にわたって、我が国の教育の基本理念とされてきたものです。 ○教育勅語は、父母に孝行しましょう、兄弟姉妹仲良くしましょう、万一大事が起こったら勇気をもって、身をささげて皇室国家のためにつくしましょうといった徳目が掲げられたもの。式日の日に奉読されたり、謄本は厳重に保管されたりと、過剰な神格化がされた。 ○終戦後、日本国憲法が公布・施行され、戦後の様々な改革が進む中、主権が国民ではなく、天皇にあることを根本理念とする教育勅語を教育の根本とする考え方が改められるとともに、これを神格化して取り扱うことなどが禁止され、国会の決議で廃止され、(もともと法律ではないが)政治的効力を失った(道徳訓)。 ○昭和21年11月3日には、日本国憲法が公布され、「基本的人権の尊重のもと、民主的で平和的な国家を建設し、世界の平和と人類の福祉に貢献しよう」とする憲法の理念に基づいた新しい教育の理念と基本原則を確立するために、昭和22年に制定されたのが、教育基本法であった。国民自らの法律の形式によるものとして制定された。 旧教育基本法の制定(昭和22年3月31日)
7
旧教育基本法によって・・・ ・教育の機会均等(第三条) 「全て国民は、ひとしくその能力に応ずる 機会を与えられなければならないので あって・・・、教育上差別されない」 ・9年の義務教育(第四条) ・男女共学(第五条) 日本国憲法により、個人の尊重や法の下の平等、教育を受ける権利がうたわれたことを受けて、具現化したのが旧教育基本法。戦前は、小学校1、2年以外3年以降は男女別学であったり、旧姓高等学校への女子の入学が認められていなかったので、官立大学への進学も限られていた。中等教育においても男子の中学校と女子の高等女学校(12歳~4年制)は別学で就業年限にも差があった。 (参考) 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 日本国憲法26条 1 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。
8
1(1)②教育基本法の改正について 旧教育基本法の制定 (昭和22年3月31日公布・施行) 改正に向けた主な議論
旧教育基本法の制定 (昭和22年3月31日公布・施行) 新しい教育諸制度の構築・整備 教育をとりまく環境の変化 社会全体 家庭 学校 地域社会 子ども ○教育基本法の制定により、新しい教育諸制度の構築・整備が進みました。「教育の機会均等」が規定され(第三条)、義務教育の延長(約8年→9年)(第四条)、学校教育法や社会教育法の制定、教育委員会制度の創設等が行われ、教育水準の飛躍的向上や戦後経済復興の原動力になったといえる。 〇その後、約60年が経過し、その間、教育を取り巻く環境は大きく変わり、変化に対応した教育基本法改正に向けた議論が数年にわたって、繰り広げられた、そして平成18年の改正にいたったわけだが、少し詳しく次でみていく。 改正に向けた主な議論 教育改革国民会議(平成12年) 中央教育審議会における審議(平成13~15年) 与党教育基本法に関する協議会(平成15~18年) 制定後約60年 はじめての改正 教育基本法改正 (平成18年12月22日公布・施行)
9
(参考)旧法制定時と法改正当時の社会状況変化 新たな教育ニーズとは?
事項 旧法制定当時 当時(平成18年度) 総人口 7,810万1千人(S22) 1億2,775万7千人(H17) 平均寿命 (男) 50.06歳(S22) (女) 歳(S22) (男) 78.53歳(H17) (女) 歳(H17) 合計特殊出生率 4.54(S22) 1.26(H17) 総人口に占める 65歳以上人口 4.8%(S22) 20.1%(H17) 高校進学率 42.5%(S25) 97.7%(H18) 大学進学率 10.1%(S30) 52.3%(H18) 外国人学生数(大学等) 4,703 人(S35) 10万4,427 人(H17) 第一次産業 (農業、林業、漁業) 48.5%(S25) 4.8%(H17) 第二次産業 (鉱業、建設、製造業) 21.8%(S25) 26.1%(H17) 第三次産業 (サービス業) 29.6%(S25) 67.2%(H17) ・寿命が長く⇒生涯学習 ・進学率高まる⇒求められる教育水準高くなったり、社会教育環境の充実など必要に? ・外国人学生増加 ⇒ グローバル化 流動性高 競争的環境 ・産業構造変化⇒ 農家に三世代同居減少、都会への出稼ぎ、核家族化(子育てに親からの支援が得にくくなったり) ・少子化が教育に及ぼす影響として、1.子どもの切磋琢(さたく)磨の機会の減少、2.親の過保護・過干渉、3.子育ての経験や知識の伝承の困難、4.学校行事や部活動の困難、5.良い意味での競争心が希薄になることなど が指摘されている。
10
<教育を取り巻く環境の変化> 社会 地域社会 家庭 学校 子供 ●科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化
●価値観の多様化 ●社会全体の規範意識の低下 等 社会 家庭 学校 地域社会 この60年、社会全体では、科学技術の進歩、情報化、少子高齢化などの社会変化、家庭では教育力の低下や育児に不安や悩みを持つ親の増加、学校ではいじめ、校内暴力などの問題行動、地域社会では、地域連帯感の希薄化や教育力の低下がみられるようになりました。 特に、子どもをめぐっては、基本的生活習慣の乱れ、学ぶ意欲の低下や学力低下、体力の低下、社会性の低下や規範意識の欠如など、課題が多くみられるようになり、社会全体で「教育改革」を進めることが強く求められるようになった。 ●教育力の低下 ●育児に不安や悩み を持つ親の増加等 ●いじめ、校内暴力 などの問題行動 ●質の高い教員の 確保 等 ●教育力の低下 ●近隣住民間の連帯 感の希薄化 ●地域の安全、安心 の確保の必要性 ●基本的生活習慣の乱れ ●学ぶ意欲の低下や学力低下傾向 ●体力の低下 ●社会性の低下、規範意識の欠如等 子供
11
<改正に向けた議論> ○臨時教育審議会(昭和59~62年) ○教育改革国民会議(平成12年) 「教育改革国民会議報告-教育を変える
○臨時教育審議会(昭和59~62年) ○教育改革国民会議(平成12年) 「教育改革国民会議報告-教育を変える 17の提案」を報告 ・人間性豊かな日本人の育成 ・一人ひとりの才能を伸ばし創造性に富む人間の育成 ・新しい時代に新しい学校づくり ・教育振興基本計画と教育基本法 ○旧基本法制定後、教育の目的等について、十分な内容とは言えないのではないか、といった指摘は、制定後まもない昭和20年代からすでに始まり、昭和50年代以降教育改革が政府の重要課題とされ、教育基本法の改正をめぐる議論が本格化した。当時、受験戦争の過熱化、校内暴力、いじめ、不登校の問題など、「教育荒廃」と呼ばれる現象が指摘され、教育改革の必要性が高まっていました。昭和59年~62年臨時教育審議会により戦後教育の在り方の見直しなどがされていたところだが、基本法は改正しないという前提で議論していた。 <教育改革国民会議> ○平成12年の12月に、「教育改革国民会議報告―教育を変える17の提案」を取りまとめた。「全員が奉仕活動を行うようにする」といった具体的な提案のほか、4つ目、教育施策の総合的、計画的な推進を図るための基本計画が必要であるということと、グローバル化や少子高齢化社会、環境問題、生涯学習社会など時代の変化を考慮した基本法が必要と提言。家庭教育の重要性や学校、家庭、地域社会の連携の明確化を考慮すべきといったことが提言。PDCAサイクルの徹底と必要なところへの投資。
12
(中間報告後)国民からの意見募集、全国5会場で公聴会、
○中央教育審議会における審議 (平成13年~平成15年) (21世紀の教育が目指すもの) ①自己実現を目指す自立した人間の育成 ②豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成 ③「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成 ④新しい「公共」を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成 ⑤日本人の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成 ○この「教育改革国民会議」の提言を受けて、文部科学省は平成13年11月、中央教育審議会に「教育基本法の見直し」について諮問しました。 ○中央教育審議会では、精力的に審議を行い、平成14年11月に「中間報告」を公表したあと、全国の5会場で、公聴会を開くとともに、有識者や教育関係団体からヒアリングを実施するなど、国民各層からの意見を聴く機会を設け、審議を深めました。 ○中央教育審議会では、これまでの旧教育基本法にも掲げられていた「個人の尊厳」「人格の完成」などの普遍的な理念は今後とも大切にする一方で、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正することが必要であると提言されました。 ○具体的な提言内容は、次のとおりでありまして(スライド) (21世紀の教育が目指すもの) ○「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を目指すため、これからの教育は、以下の5つの目標の実現に取り組むことが必要。 ①自己実現を目指す自立した人間の育成 ②豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成 ③「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成 ④新しい「公共」を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成 ⑤日本人の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成 という目標を掲げています。 (中間報告後)国民からの意見募集、全国5会場で公聴会、 有識者・団体等ヒアリング
13
(参考)中央教育審議会 (所掌事務) 文部科学大臣の諮問に応じて、人材の育成や スポーツの振興に関する重要事項を調査審議し、
文部科学大臣の諮問に応じて、人材の育成や スポーツの振興に関する重要事項を調査審議し、 文部科学大臣に意見を述べること 等 (構成) ・委員 30名以内 ・5分科会 (このほか、必要に応じて部会を設置) 中央教育審議会 概要 HP ちなみに、先ほどからよく出てきている中教審とは、国家行政組織法に基づき設置されている審議会である。省庁にはいろんな審議会がある。文部科学省には中教審や文化審議会などがある。生涯学習・社会教育に関する重要な事項については、中央教育審議会で審議される。大臣の諮問に応じて、指摘、調査結果、助言を盛り込み、どのような施策を講じていくべきかということを述べた答申を返す。委員は、学校関係者や企業関係者、ジャーナリストや地方自治体の長など幅広い分野の有識者から構成される。審議会には、生涯学習分科会といった分科会と部会が設置され、常時開催されていて一般にも公開されている。答申を読むと、行政としてどのような方向性に進むべきかがよくわかるようになっているので重要。 (審議会等) 第八条 第三条の国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる。
14
21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、重要な教育の理念や原則を明確にするため、改正する。
(教育基本法改正の必要性と改正の視点) 21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、重要な教育の理念や原則を明確にするため、改正する。 <改正の視点> ・信頼される学校教育の確立 ・「知」の世紀をリードする大学改革の推進 ・家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域 社会の連携・協力の推進 ○(教育基本法改正の必要性と改正の視点) ○「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、重要な教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正する。」必要があるとし、改正の視点として、 ①信頼される学校教育の確立(1人1人の個性に応じて基礎・基本的な知識・技能、学ぶ意欲をしっかり身に付ける、道徳や芸術、健やかな体をはぐくむ教育など、能力を最大限に伸ばしていくことが重要。時代の変化に的確に対応したものとなることが重要) ②「知」の世紀をリードする大学改革の推進(国境を越えた大競争時代) ③家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進を提言しています。このほか、具体的な改正の方向についても提言。
15
<改正の視点(続き)> ・「公共」に主体的に参画する意識や態度の 涵養 ・日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する 心と国際社会の一員としての意識の涵養 ・生涯学習社会の実現 ・教育振興基本計画の策定
④「公共」に主体的に参画する意識や態度の寛容 阪神淡路大震災のボランティア活動に見られるように互いに支えあい協力しあう互恵の精神に基づく、新しい公共の精神、社会規範を尊重する意識や態度 ⑤日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養 ⑥生涯学習社会の実現 ⑦教育振興基本計画の策定
16
与党における検討(平成15年~平成18年) (与党教育基本法に関する協議会) 「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について」
(最終報告)(平成18年4月) ※協議会10回、検討会70回 次に行われたのが、 ≪与党における検討≫ ○中央教育審議会の答申において、法改正の必要性が提言された場合、通常は、その後ただちに政府において立法のための作業が開始されますが、教育基本法は、教育の基本的な理念や原則を定める法律であり、憲法に準ずるような重要性を有するものとされていることから、国民的な議論を深めることが必要ということで、中教審答申後、さらに、与党(当時は自民党と公明党)における検討が10回、下部の検討会では70回にわたって行われた。今の基本法にかなり近い原案が逐条的に示された。 (以下参考) ○平成16年6月に「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(中間報告)」が公表されました。 ○中間報告では、検討の前提として、 ①教育基本法の改正法案は、議員立法ではなくて、政府提出法案であること(なぜ?)(←政府が責任を持ってチェックをして、法案を提出するということを確認) ②改正方式については、一部改正ではなく、全部改正によること(なぜ?)、(←一部改正の場合、元の法律の骨格は残し、字句(軸ではないよ)の修正を行うということになりますが、元の法律では、「大学」や、「生涯学習」、また「私学」など、現代の教育の仕組みにおいて骨格をなすような大きな事柄についての規定がなく、新しく加えていくとなると、一部改正ではできないということで、全部改正で行うという結論となりました) ③教育基本法は、教育の基本的な理念を示すものであって、具体的な内容については他の法令にゆだねること、 ④簡潔明瞭で、格調高い法律を目指すこと(これは、3番目の内容と通ずるものですが、教育基本法は理念法なので、教育の骨格だけを示すものなので、当然簡素なものになるわけです。であれば、その分、格調高い法律にしようということになりました) ○また、改正の内容に関して、国を愛する心や国に寄与する姿勢を身に着けることをどのように盛り込むかが大きな論点となっていました。 ○このほかにも、前文中の「憲法の精神に則り」の扱い、宗教的情操の扱い、義務教育の年限の扱い、高等学校や大学の位置づけ、職業教育、教育における国と地方公共団体の役割、教育行政における「不当な支配」など、様々な論点があることが指摘されました。 ○中間報告以降、これらの論点についてさらに議論が深められ、平成18年4月に「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」が了承され、政府に報告されました。
17
国会における論点 (第164回通常国会、第165回臨時国会)
国会における論点 (第164回通常国会、第165回臨時国会) 改正の必要性 憲法改正との関係 国民的議論が不十分ではないか 「我が国を愛する態度」について、学校における指導や評価の在り方、「態度」ではなく「心」を扱うべきではないか 等 ≪国会における論点≫ ○中央教育審議会答申や「与党協議会」の最終報告を踏まえて、文部科学省では、法案の作成作業を行い、平成18年4月に、「教育基本法案」を閣議決定し、第164回通常国会に提出しました。 ○国会審議における主な論点。そもそもの改正の必要性、憲法改正との関係(憲法を先に改正しなければならない、制約を受ける訳ではないと安部総理が答弁)、国民的議論が不十分であること(国民会議、中教審、与党で十分審議したと答弁)などが論点となりました。 ○後で述べますが、この改正で第2条に「教育の目標」が新たに掲げられ、その一つに「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とあるのですが、この部分について、国を愛するというのは、統治機構を含むのか(含まない)、教育の目標と内心の自由との関係、学校における指導や評価の在り方、「態度」ではなく「心」を扱うべきではないかといった点が論点となりました(心と態度は一体として養われるもの。我が国と郷土を愛することと、国際社会の平和と発展に寄与することを一体として規定しているので、これを受ける語としては「態度を養う」。(与党内でも公明党が国を愛する心としていた自民党の意見に反対していた。戦前の国家主義、軍国主義を想起させる)。
18
③主な改正点 どのような人間の育成を目指すか前文の改正や教育の目標等などを通じて明確化。 ・知・徳・体の調和がとれ、生涯にわたって
・知・徳・体の調和がとれ、生涯にわたって 自己実現を目指す自立した人間 ・公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的 に参画する国民 ・我が国の伝統と文化を基盤として国際社会を 生きる日本人 教育の目標や生涯学習の理念などを規定。 ○では、旧教育基本法から新しい教育基本法への主な改正点でありますが、 ○新しい教育基本法では、「人格の形成」や「個人の尊厳」などの旧教育基本法の普遍的な理念を継続しつつ、これからの教育が我が国の未来を拓いていくため、 ①知・徳・体の調和がとれ、生涯にわたって自己実現を目指す自立した人間 ②公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的に参画する国民 ③我が国の伝統と文化を基盤として国際社会を生きる日本人 の育成を目指すことを明確にし、そのような教育を実現するために必要な教育の目標や生涯学習の理念などが規定された。
19
「公共の精神」「伝統と文化を尊重」「環境の保全に寄与する態度」 など
教育の目標を新設(第2条) 「公共の精神」「伝統と文化を尊重」「環境の保全に寄与する態度」 など 教育に関する重要事項として新たに条を設け規定 生涯学習の理念、大学、私立学校、家庭教育、幼児期の教育、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力、教育振興基本計画 ○具体的には、 ①第一に、「人格の完成」や「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」という、教育の根本的な目的が、引き続き規定される一方で、 教育の目的を実現するために重要と考えられる具体的な事柄が、5項目に整理され、「教育の目標」として新たに規定されています。その際、「真理」「正義」などの旧基本法に規定されていたものを引き続き規定するとともに、「公共の精神」「伝統と文化を尊重」など、今日重要と考えられる事柄が新たに規定されました。 ②教育に関する重要な事項として、「生涯学習の理念」、「大学」、「私立学校」、「家庭教育」、「幼児教育」、「学校・家庭・地域住民等の相互の連携協力」、「教育振興基本計画」について、それぞれ新たに条を設けて規定されています。
20
機会均等、義務教育、学校教育、社会教育、 政治教育、宗教教育、教育行政
規定の見直し、充実 機会均等、義務教育、学校教育、社会教育、 政治教育、宗教教育、教育行政 ③従来規定されている、教育の機会均等や、義務教育、社会教育、政治教育、宗教教育、教育行政においても、規定内容を見直し、充実が図られています。 などについて規定した点が、主な改正点です。 ≪改正方式について≫ 全面的に改正する場合、この「全部改正」という方法以外に、「廃止制定」という方式をとることもあります。 ○「全部改正方式」は、制度そのものの基本は維持することとした場合に取ることが多く、 ○一方、「廃止制定」の方式は、改正前と改正後の継続性を強調する必要がないときや、継続性が比較的薄いときに取ることが多いです。 ○教育基本法の改正は、これまでの教育基本法に規定されている普遍的な理念は今後とも引き続き規定するものであることから、「廃止制定方式」ではなく、「全部改正方式」とされています ※改正方式 全部改正
21
(2) 教育基本法の構成 前文 第1章 教育の目的・理念 ・教育の目的・理念の明示 第2章 教育の実施に関する基本
(2) 教育基本法の構成 前文 第1章 教育の目的・理念 ・教育の目的・理念の明示 ・「生涯学習の理念」「教育の機会均等」を規定 第2章 教育の実施に関する基本 「義務教育」、「学校教育」、「教員」、「社会教育」、 「政治教育」、 「宗教教育」、「大学」、「私立学校」、 「家庭教育」、「幼児期の教育」、 「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」 ○教育基本法全体の構成は4つの章から構成されている。章の前には、前文がつけられている。通常、法令に前文が置かれるのは、特に、その法令制定により目指す理想を明らかにする必要がある時に限られる。憲法のほか、男女共同参画社会基本法など、ある分野における基本的な事項を定めた法律に置かれています。教育基本法は、教育の基本を確立する重要な法律であることから、その趣旨を明らかにするため、前文が設けられている。 前文は、日本国民が願う理想として、「民主的で文化的な国家」の発展と「世界平和と人類の福祉の向上」への貢献という大きな理想が2つあることを示す。その理想を実現するために教育を推進するということを述べている。
22
(2) 教育基本法の構成 第3章 教育行政 教育振興基本計画の策定等 第4章 法令の制定 ・この法律の諸条項を実施するための必要な法令
(2) 教育基本法の構成 第3章 教育行政 ・教育行政における国と地方公共団体の役割分担、 教育振興基本計画の策定等 第4章 法令の制定 ・この法律の諸条項を実施するための必要な法令 の制定について規定 ○教育基本法全体の構成は4つの章から構成されている。章の前には、前文がつけられている。通常、法令に前文が置かれるのは、特に、その法令制定により目指す理想を明らかにする必要がある時に限られる。憲法のほか、男女共同参画社会基本法など、ある分野における基本的な事項を定めた法律に置かれています。教育基本法は、教育の基本を確立する重要な法律であることから、その趣旨を明らかにするため、前文が設けられている。 前文は、日本国民が願う理想として、「民主的で文化的な国家」の発展と「世界平和と人類の福祉の向上」への貢献という大きな理想が2つあることを示す。その理想を実現するために教育を推進するということを述べている。
23
1(3)図書館関連の主な規定 ①教育の目標(第2条) 【新設】 ②生涯学習の理念(第3条)【新設】 ③家庭教育(第10条)【新設】 ④社会教育(第12条) ⑤学校、家庭及び地域住民等の 相互の連携協力(第13条)【新設】 ⑥教育行政(第16 条) ⑦教育振興基本計画(第 17 条)【新設】 ○旧教育基本法は全面改正されましたが、改正された教育基本法について、図書館に特に関連すると思われる7点を中心にご説明していきたいと思います。
24
教育の目的(第1条) 第1条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な 国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身
第1条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な 国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身 ともに健康な国民の育成を期して行われなければ ならない。 ○図書館関連の規定に入る前に第一条で教育の目的について触れる。 ○この法律でいう教育には人を人として育てるあらゆる教育作用が含まれるとされている。他省庁所管だが、保育所や大学校も含まれる。 ○第一条に教育の目的を掲げています。「人格の完成」といってもよくわかりにくいですが、人格の完成とは、個人の価値と尊厳との認識に基づき、人間のそなえるあらゆる能力を、できる限り、しかも調和的に発展せしめること(「教育基本法制定の要旨」昭和22年文部省訓令)といわれています。これで、こういう人なら人格が完成しているということが述べられたことはありませんが、個人が生涯を通じて能力を発展させていく、教育とはそれに貢献することです、といったその志向性を掲げているといえるかもしれません。 一つ目の人格の完成は個人に限定された側面からとらえられがちであるため、個人は同時に社会の一員でもあるという「公的な側面」を強調するために、教育の目的が社会の形成者として必要な資質を備えた国民を育成すること、でもあることを掲げています。これは、この必要な資質とは先天的な資質の向上と後天的に一定の資質を身につけるという両面である。
25
教育の目的を実現するための5つの努力目標を規定
①教育の目標(第2条)【新設】 教育の目的を実現するための5つの努力目標を規定 第2条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲 げる目標を達成するよう行われるものとする。 一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と 道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自 律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んず る態度を養うこと。 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共 の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度 を養うこと。 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛すると ともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。 ○改正により新たに「教育の目標」が第二条に掲げられました。第一条で掲げられた目的を実現するために重要な事柄を努力目標として5つ掲げた。旧法は「教育の方針」として、もう少し漠然と、教育上留意することなどが数点掲げられていたが、これをより明確化した。 五 の態度はどのように指導するのか、と国会で問われた。具体的には、社会科や道徳などで現在の学習指導要領においても規定されているように、ふるさとの歴史や昔から伝わる行事、国や社会の発展に大きな働きをした先人、偉人、国際社会で活躍した日本人等の業績について調べたり、理解を深めるとともに、我が国の歴史に対する理解と愛情を育み、国の発展に努力していこうとする態度を育てる、といった指導を行っていく。
26
5つの努力目標とは ① 基本的事項 ② 主に自分自身に係ること ③ 主に社会とのかかわりに係ること
5つの努力目標とは ① 基本的事項 … 知(知識・教養)・徳(情操・道徳)・体(健康な体) ② 主に自分自身に係ること … (例)個性を尊重する教育を行うこと、創造性を培うこと、 勤労を重んずる態度を養うこと ③ 主に社会とのかかわりに係ること … (例)男女平等、公共の精神に基づく社会参画 ④ 主に人としての生存や、自然との共生に係ること … (例)環境保全 ⑤ 主に日本人として、国際社会とのかかわりの中で 必要となること … (例)伝統と文化の尊重、他国の尊重 ○少しわかりやすく例示すると、こんな内容が掲げられている。 一つ目はこういうことを教育の基本としましょう、ということ。幅広い知識や教養を身に付けること、「知」や道徳心を培うこと「徳」(「道徳」自己規範・自発的に正しい行為へと導くこと)、健康な体を得る「体」二つ目は個人に関すること、個性を尊重した教育をしましょう、三つ目は社会との関わりに関すること。男女平等を重んずることや、公共の精神、これは社会で起きている問題を自分のこととらえて解決に向けて主体的に参画すること、などでしょうか。四つ目は環境との関わり、環境保全に貢献する態度を養いましょう、五つ目はグローバル化を背景に、自分の国の伝統と文化を尊重し、他の国も尊重し、国際社会全体で発展できるようにする態度を養いましょう、といったことです。
27
「教育の目標」は社会教育にも適用されるか?
〇この目標は学校教育だけではなく、社会教育にも適用されます。ただし、すべての目標を一律に取り扱うことまで求める趣旨ではなく、具体的な教育内容は各教育主体の判断の下、決定されるべきものと解釈されています。
28
図書館にできることとは? 教育の目標と図書館 (例) 知・徳・体 勤労を重んずる態度 公共の精神、社会形成への参画 伝統・文化の尊重
(例) 知・徳・体 勤労を重んずる態度 公共の精神、社会形成への参画 伝統・文化の尊重 ○例えば、図書館がこのような教育の目標を目指すとき、どのようなことが図書館にできるでしょうか? 例えば、一つ目の知・徳・体のうち、「知」は幅広い「知識・教養」を身に付けることですが、人々が新しい情報や必要な資料を必要とするときに、利用できる最も身近な施設は図書館であり、これに貢献することは基本的なことと思います。例えば、勤労を重んずる態度、これはニートが社会問題化したことを背景に、子どもたちに職業観・勤労感、職業に関する知識や技術を身につけてもらうことを重視して盛り込まれた。例えば学校と協力し、図書館で子どもが将来つきたい仕事のことを調べるにはどうしたら良いか調べ方学習を支援したり、いろんな職種の人を主人公にした物語や伝記を紹介したりするのも一つ。もっと直接的に図書館での職業体験や子ども向けバックヤードツアーを企画することだってできるのではないでしょうか。 あるいは、「公共の精神に基づいて社会の形成に参画し」、というとき、国民が自分の身の周りで起きている事象や地域の現代的課題を理解するため、社会・経済・政治・教育等、幅広い分野の情報が入手できる基盤として図書館は非常に重要です。 住民の読書を支援するだけでなく、地域や住民の課題解決を支援するため、ビジネス支援、子育て支援、医療・健康、福祉、法務等、地域や住民が課題を認識し、解決に役立つ情報提供やサービス、具体的には関連資料の案内図やサインの整備、テーマ別資料コーナーや展示コーナーの設置、パスファインダーの作成等あげられるが、こうした活動を通じて社会の形成に主体的に参画する国民の育成に寄与することも考えられる。 「伝統と文化の尊重」であれば、例えば、地域の伝統や文化に関する地域資料、図書のみならず雑誌や新聞記事、映像資料など、あるいは地域の団体が提供するパンフレットの提供や講座やセミナー等を通じて、住民が暮らしている地域の伝統や文化への理解を深めるなど、これらに親しむ機会を提供することもひとつ。 一見、理念的に描かれた目標のように見えるが、図書館は、資料の収集、整理、保存、提供等、日々の職務を通じて、教育の目標を達成することが期待されています。
29
②生涯学習の理念(第3条)【新設】 「生涯学習社会」 「生涯学習の理念」を教育に関する基本的な理念として規定。
「生涯学習社会」 その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習できる社会 その成果を適切に生かすことのできる社会 〇次に、平成18年の改正で注目すべき点は、「生涯学習の理念」が、第3条で新たに規定されたことです。 〇第3条では、国民一人一人が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、生涯学習社会の実現を目指すべき旨を、教育の重要な基本理念として掲げています。 〇生涯学習社会とは、 ①国民だれもが生涯を通じ、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習できる社会であるとともに、 ②その成果を適切に生かすことのできる社会である と定義しています。 〇このように、「生涯学習社会」は、各個人が単に学習できるのみならず、その成果を生かすことができる社会であると定義されています。「学歴社会」が問題視され、その是正が求められてきましたが、生涯学習社会においては、一人一人だれもが、生涯にわたっていつでも学習することができ、その成果が適切に評価され、かつ地域や社会あるいは職業生活の中で生かされる、そういったことが重視されています。
30
中央教育審議会生涯学習分科会制度問題小委員会(第1回)配付資料(2007年6月28日)
ちなみに、よくわかりにくい用語として生涯教育、生涯学習、社会教育があげられます。ここで少し確認です。 教育とは人を育てることです。教える人、学ぶ人、がいます。 教育には主に3つのタイプがあげられます。学校教育、家庭教育、社会教育です。 社会教育は、かなり広いですが、学校、家庭教育以外の広く社会における教育です。社会教育施設において提供される講座が社会教育の例としてわかりやすいでしょう。 学ぶ人の視点から見てみると学習には大きく二つあります。先ほどの3つのタイプの教育など、誰かからの教育を受けることによる学習が1つ。もう一方は自らの自己学習です。 自己学習には、読書等、スポーツ活動、レクリエーション活動様々な場で学ぶ者により行われるものです。 生涯学習とは、学ぶ者に着目した概念で、先ほどの3つの教育による学習と自己学習も含めた全てを包含するものです。(平成20年新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」) 教育基本法第十二条「個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育」 社会教育法第二条 「社会教育は学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)」 (社会教育法における社会教育の定義は、行政として担う範囲として組織的という定義を用いている。教育基本法はより広い定義「) (参考) ノンフォーマル教育・・・正規の学校教育以外に、ある目的をもって組織された教育活動(≒社会教育法上の社会教育)。オフザジョブトレーニング。 インフォーマル教育・・・組織的、体系的教育ではなく、習俗的、無意図的な教育機能。具体的には、家庭、職場、遊びの場で学ぶ、家族や友人の手本や態度から学ぶ、ラジオの聴取、映画・テレビの視聴を通じて学ぶなど。オンザジョブトレーニング。 では、 中央教育審議会生涯学習分科会制度問題小委員会(第1回)配付資料(2007年6月28日)
31
生涯教育① 「生涯学習のために自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方」、 「国民一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的理念」 (昭和56年中教審答申「生涯教育について」) 生涯教育とは何か?生涯教育とは、「考え方や理念」であるとされています。(平成20年答申)生涯学習を教える側からみて生涯教育といっているのではありません。 現代社会の教育とくに公教育のあり方を〈一生涯にわたる教育〉という見地から広く社会的にとらえなおし,総合的に再編成しようとする新しい教育変革の原理ないし構想の総称(昭和40年,パリで開かれたユネスコの成人教育推進国際委員会で,P.ラングランが提唱し採択されて以来,国際的に注目され展開されるようになった。)昭和56年中教審答申「生涯教育について」は、生涯教育とは、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方、国民一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的理念であるとしている。いってみれば、社会全体で生涯学習を支援する体制を築きましょうね、学校教育、社会教育、家庭教育全てを人の一生というスケールにのっけて総合的・調和的に機能させ、そうやって人を育てていきましょうねという考え方・理念が生涯教育(=「生涯学習の理念」教育基本法第三条)であり、個々人が学ぶ活動が生涯学習である。
32
生涯教育② 「生涯教育の必要は、現代のごとく変動の激しい社会では、いかに高度な学校教育を受けた人であっても、次々に新しく出現する知識や技術を生涯学習しなくてはならないという事実から、直接には意識されたのであるが、生涯教育という考え方はこのように生涯にわたる学習の継続を要求するだけでなく、家庭教育、学校教育、社会教育の三者を有機的に統合することを要求している。」 (昭和41年社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」)
33
③家庭教育(第10条)【新設】 保護者が子供の教育について第一義的責任を 有することを規定
有することを規定 国や地方公共団体が家庭教育支援に努めるべきことを規定 (参考)図書館法 (平成20年改正で追記) 第三条 図書館奉仕の留意事項 「家庭教育の向上に資することとなるように」 ※家庭教育は、本来、保護者の自主的な判断によって、 行われるべきもの。国や地方公共団体が介入すべき ことではない。 ※行政が行うのは「支援」 〇次に家庭教育についてですが、「家庭教育」については、第10条で新たに規定されました。核家族化や少子化などが進み、様々な問題(過干渉・過保護、放任、児童虐待が社会問題化するなど)、家庭教育の機能の低下が指摘される中で、各家庭が改めて子どもの教育に対する責任を自覚し、その役割を認識することが必要である…ということで、家庭教育の役割等が規定されました。 〇なお、家庭教育とは、家庭において父母その他の保護者がその子どもに対して行う教育を言います。未成年の子どもに対する教育を主に想定していますが、成年の子どもに対する教育も排除してはいません。 〇条文では、第1項で、父母その他の保護者は、この教育について第一義的な責任を有することを明確に示し、第2項では、保護者が家庭教育の役割を十分に果たせるよう、国や地方公共団体が、家庭教育の支援を行うことを規定しています。 〇その、昔は、おじいちゃんやおばあちゃんと同居している家族が多く、また地域のご近所づきあいもあったため、保護者以外の人々から、子育てへの協力や支援を、良くも悪くも得やすい環境でありましたが、現代は、核家族が増加しており、また、特に都会では、隣にどんな人が住んでいるのかもよくわからない…という状況で、周囲からの家庭教育への支援というのが全く途切れてしまっていると。だから、それを補っていくために、地方公共団体や国においても様々な取組を行う事が必要とされ、実施しているというわけであります。 〇これを踏まえ、平成20年の図書館法改正でも、第3条の図書館奉仕に関する規定で図書館奉仕の際には、「家庭教育の向上に資することとなるように」留意することが新たに盛り込まれました。 〇なお、この条文では、個々の家庭における具体的な教育内容については、規定していません。家庭教育というのは、本来、保護者の自主的な判断によって、行われるべきものであって、国や地方公共団体が、介入すべきことではありません。ですので、条文では、「自主性を尊重し」として、行政が、各家庭における具体的な教育の内容に立ち入ることの無いよう、その自主性に配慮しなければならないことを明記しています。
34
④社会教育(第12条) 国や地方公共団体により社会教育が奨励されなければならない旨を明記。 (社会教育)
第12条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会に おいて行われる教育は、国及び地方公共団体 によって奨励されなければならない。 ※改正により下線部を新たに規定 〇社会教育については、第12条で規定されています。 〇第1項では、「社会教育」が、国及び地方公共団体によって奨励されるべきであることが規定されています。 〇また、第2項では、社会教育を、国や地方公共団体がどのような方法で振興していくかということが規定されています。 〇ちなみに、「社会教育」とは、先程図でお示ししたとおり、教育のうち、学校又は家庭で行われる教育を除き、広く社会において行われる教育を指し、社会教育法第2条で定義されています。
35
「個人の要望」 「社会の要請」 ⇒生涯学習の振興施策を推進するにあたっては、 両方のバランスの視点を持つことが重要。
「個人の要望」 「社会の要請」 ⇒生涯学習の振興施策を推進するにあたっては、 両方のバランスの視点を持つことが重要。 〇「個人の要望や社会の要請にこたえ」とありますが、 〇「個人の要望」に応えるというのは、人々の多様な学習の需要に応えていくことを意味しています。趣味教養を深めたりボランティア活動を行うために必要な知識を身につけたり、定年退職後も充実した毎日を送るために様々な学習を行うなど、様々な人々の多様な学習需要に応えていくことが、社会教育の重要な役割とされています。 〇その一方で、社会教育には、個人の要望に応えるのみならず、「社会の要請にもこたえる」面を有していることが、ここで明示されています。環境問題ですとか、防災とか、介護とか、地域文化の振興など、各地域が抱える課題や、社会における課題に対処するために、住民に学習の機会を提供する、こういったことも、社会教育の重要な役割であるということです。中央教育審議会答申では生涯学習の振興施策を推進するにあたっては、両方のバランスの視点を持つことが重要であると指摘されています。
36
現代的課題の例 生命、健康、人権、豊かな人間性、 家庭・家族、消費者問題、地域の連帯、 まちづくり、交通問題、高齢化社会、
男女共同参画型社会、科学技術、 情報の活用、知的所有権、国際理解、 国際貢献・開発援助、人口・食糧、環境、 資源・エネルギー等 生涯学習審議会「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について(答申)」 (平成4年) ○例えば、現代的課題ということがよくいわれるが、具体的には、このようなことがあげられている。
37
個人の要望と社会の要請 両方に配慮した取組とは?
〇「個人の要望」に応える取組と、「社会の要請」に応える取組というのは、必ずしも別のものと言うことではない。 ①例えば、図書館で乳幼児や児童を対象にした読み聞かせ会が行われているが、これは、子供たちの本を楽しみたいという要望に応える取組であるとともに、例えば、放課後に,家に帰っても兄弟や親がいないという一人っ子の子供たちに対して、安心・安全な居場所をつくるという、社会的な要請に対応する取組という一面もある。 ②また、特に震災後、防災について、切実な問題として人々の関心が高まっている。防災に関する教育を行う事は、個人の関心に応える内容であるとともに、同時に、防災に強い街づくりを進めるという、社会的な要請に応えるためにも、必要な取組であると言える。 ③高齢者の自分史づくり・・・作って終わりなら個人の要望満たすだけだが、その自分史が図書館に置いてあり、誰もが見られるようになっていれば、それは様々なノウハウが詰まった資料として活用することができて、例えば現役時代農業をやっていた人の自分史で、何かの災害に遭ったときにどう対処したかというような内容がかかれていれば、同じような災害があったときに、災害からの復興のために活用できる資料にも成りうる。 というように、いろいろ考えられる。 〇このように、社会教育には、個人の要望に応えることと社会の要望に応えることの両面性を有していますし、行政においては特にそれを意識しながら、社会教育を振興していく必要があるということであります。
38
④社会教育(第12条) 国や地方公共団体による社会教育の振興方策を例示(ハード⇒ハード+ソフト) (社会教育) 第12条
第12条 2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民 館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の 利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当 な方法によって社会教育の振興に努めなければ ならない。 ※改正により下線部を新たに規定 〇で、このような重要な役割を果たしている社会教育を、国や地方公共団体がどのような方法で振興していくかということが、第2項に規定されています。 〇まず、「図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設を設置」することとあります。つまり、これらの施設は、社会教育のために設置された施設であるということが明示されていると言えます。 〇また、「学校施設の利用」とあるのは、国や地方公共団体が、学校教育に支障のない限り、社会教育のために、学校の施設を提供しなければならないことを意味します。例えば、公立図書館が設置されていない自治体で、学校図書館を、日曜日など学校教育に支障の無い時に、地域の人々に開放することなどが該当します。 〇「学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法」ですが、 〇「学習の機会の提供」とは、例えば、公民館や図書館で市民講座を実施することなど、社会教育の学習の機会を国や地方公共団体が提供することを指しています。 〇また、「情報の提供」には、 ①どこでどのような学習の機会が提供されているかといった、講座の内容や学習場所、学習施設の所在地などに関する「案内情報」 ②学習者が学習活動を通して得る知識・技術に関する情報である「内容情報」 ③学習の仕方や方法に関する「アドバイス情報」。これは、例えば「こういう学習を行いたいが、どういう学習機会があるか、どういう指導者がいるか」といったことや、「学習している内容や方法が自分に合わない」とか、「講座を受講したけれど、自分が求めているものとは違う」などといった、学習活動を開始したり、継続したり、より効果的な各週活動を行うための指導助言。 〇そして、「その他適当な方法」というのは、たとえば、社会教育指導者の資質向上のための研究協議会や研修の実施など、国や地方公共団体が行う社会教育の振興するための取組全般を指しています。
39
地方教育行政の組織及び運営に関する法律 (教育機関の設置) 第三十条 地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができる。
40
「学習情報」 案内情報 内容情報 アドバイス情報
案内情報 内容情報 アドバイス情報 〇「学習情報」には、こういった3つの分類が考えられています。 (出典:国研社研『社会教育主事のための社会教育計画Ⅱ』(平成14年度)p2 出典:国立教育政策研究所社会教育実践研究センター『社会教育主事のための社会教育計画Ⅱ』(平成14年度)
41
⑤学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力(第13条) 【新設】
学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めることを規定 <例> 放課後子ども教室(地域と学校の連携) 等 HP 〇次に、第13条の「学校・家庭・地域住民等の連携協力」についてです。 〇子供の健全育成や、教育の目的を実現する上で、地域社会の果たすべき役割も非常に大きいということで、これらの3者がそれぞれに子どもの教育に責任を持つとともに、相互に緊密に連携協力して取り組むことが重視されています。 〇こういう趣旨から、学校、家庭、企業、そのほかの関係機関なども含めて、地域社会を構成する者が自らの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携協力に努めることについて、この13条で規定されています。 〇「地域住民その他の関係者」というのは、当該地域に住んでいる人々のほか、当該地域にある企業、児童相談所や警察署などの関係行政機関、NPOなど、その地域を構成するすべての関係者をさします。 〇「教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚」について、三者の主な役割としては、例えば、 ①学校であれば、発達段階に応じて、体系的かつ組織的な教育を授けることを通じて、知・徳・体の調和のとれた能力の伸張を図ること等 ②家庭であれば、すべての教育の出発点として、基本的倫理観、社会的な倫理観、社会的なマナー、自制心や自立心を養うこと ③地域社会であれば、地域の大人と子どもとの触れ合いや、それぞれの地域が有する自然、文化、歴史、伝統等を活かした様々な体験の機会やボランティア活動の機会を提供することなどにより、地域社会の構成員としての社会性、規範意識や自主性、創造性などの豊かな人間性を養うこと などが考えられます。それぞれがその重要性を十分に認識し、自らの責任を果たしていくことが重要です。 〇ちなみに、国でも、学校・家庭・地域が連携した様々な取り組みを促進しています。公立図書館も、地域を支える一員として、自治体や国の施策も視野に入れながら、学校などとの連携を積極的に進めていくことも重要であると考えます。国の取組を紹介しますと、 〇例えば、地域の人々にボランティアとして協力をいただき、学校の余裕教室や校庭等を活用して、子どもたちが、放課後、安全に安心して遊んだり、体験活動を行ったり、勉強したり、様々な活動を行える居場所づくりを行う事業「放課後子ども教室」という事業にも取り組んでいます。各自治体で行うこの事業に対し、補助金を交付しています。これについては、次の時間に紹介します。
42
⑥教育行政(第16条) 中立性・不偏不党性 国・地方公共団体の責務 財政上の措置 (参考) ・「教育」教育全体。学校・家庭・社会教育
・「不当な支配」 国民全体の意思を代表するものとはいえない 一部の社会的勢力(政党、官僚、財界、組合等) が党派的な力として教育に不当に介入してくること 〇本条は、教育行政の在り方、役割を示しています。教育は中立的に行われなければならないという原則をまず示し、その上で、国、地方公共団体それぞれの責務を規定するとともに、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならないことが規定されています。 <概要> 〇ここでいう「教育」というのは、教育全体を指し、学校教育だけでなく、家庭教育や社会教育も含まれます。 〇教育に中立性、普遍不党性を求める趣旨をより明確にする観点から、「教育は不当な支配に服することなく」と規定し、あわせて、教育は、国民全体の意思が表される国会という場で制定される「法律」の定めるところにより行われるべきことが規定されています。 〇また、教育行政の在り方について、「公正かつ適正に行われなければならない」と明記されています。 〇そして、「公正かつ適正に行われなければならない」という第1項を前提として、教育行政における国の役割と責務を明らかにしています。国民が、全国どこでも一定水準の教育を受けられる機会を保障することを、教育行政における国の重要な役割として明確に示しています。 〇また、第4項では、国、地方公共団体に対し、教育全般について必要な財政措置を確実に講じるということを求めています。
43
⑦教育振興基本計画(第17条)【新設】 ・第1期教育振興基本計画(H20~H24) ・第2期教育振興基本計画(H25~H29)
・都道府県・指定都市教育振興基本計画 〇教育改革を進めるためには、具体的にどのような取組を、どういったスケジュールで行うのか、ということを明らかにすることが重要であります。そこで、17条では、政府として、「教育振興基本計画」を策定することを規定するとともに、地方公共団体においても、国の教育振興基本計画を踏まえつつ、当該地方公共団体の教育の振興に関する基本的な計画の策定に努めることを規定しています。 〇なお、教育振興基本計画は、5か年計画で策定されており、第二期基本計画として平成25年度から平成29年度の期間の計画が平成25年6月に閣議決定されています。計画の内容については、図書館部分を中心に、後のスライドで説明する予定です。教育全般に関する計画で、図書館についても掲げられている内容がある。 ○国の計画は法律で策定が義務付けられているが、都道府県・市町村でもこうした教育振興基本計画は努力義務として策定することが推奨されている。
44
学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、教育職員免許法、教育公務員特例法の改正(平成19年7月)
教育基本法改正を受けた主な動き 学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、教育職員免許法、教育公務員特例法の改正(平成19年7月) 社会教育法、図書館法、博物館法の改正(平成20年6月) 教育振興基本計画の策定(平成20年7月) 以上、教育基本法について簡単に見てまいりましたが、教育基本法の改正にともない関係する法律も改正された。 ○学校教育法 今日解説しなかったが、今回の教育基本法の改正では、それまで規定されていなかった「義務教育の目的」を明確化した。これにともなって、学校教育法において、より具体的な義務教育の目標が定められた。改正基本法の理念に基づいて各学校種の目的及び教育の目標が見直された。学校に置くことができる職として副校長を新たに設けた。これらにより、学校教育の一層の充実を図る。 ○地教行法 教育基本法第16条において、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならないことなどが規定されたことを踏まえ、教育委員会の責任体制の明確化や体制の充実(事務の管理・執行状況についての報告を議会に提出、小規模市町村の事務局体制充実・指導主事の設置努力義務化)、教育における地方分権(教育委員の数の弾力化など)の推進と国の責任の果たし方(是正措置)及び私立学校に関する教育行政について(知事は必要に応じて教委から私学に学校教育に関する専門的事項について助言を求めることができる)所要の改正が行われた。 ○教育職員免許法の一部改正関係 ・普通免許状及び特別免許状に、10年間の有効期間を定めることとしたこと。(第9条)有効期間の更新、免許状更新講習の開設などについて新設 ○教育公務員特例法 ・「小学校等」の「教諭等」の任命権者は、「児童等」に対する指導が不適切であると認定した教諭等に対して、その能力、適性等に応じて、「指導改善研修」を実施しなければならないこととしたこと。(第25条の2第1項) ○社会教育三法も改正されました。社会教育法、図書館法については、またあらためて説明します。
45
2 中央教育審議会答申と教育振興基本計画について
2 中央教育審議会答申と教育振興基本計画について <生涯学習・社会教育関係動向> 教育基本法改正(平成18年12月)後の動向 (1)中央教育審議会答申 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策 について ~知の循環型社会を目指して~(答申)」(平成20年2月) (2)社会教育法等の改正 (平成20年6月) (3)教育振興基本計画(第一期)の策定 (平成20年7月) (4)「中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理」 (平成25年1月) ※ここで指摘された課題について現在検討中 (5)教育振興基本計画(第二期)の策定 (平成25年6月) ○教育基本法の改正後、生涯学習・社会教育をめぐってはスライドのように関連する答申や報告等がだされたところ。主に3つに分けて図書館に関連してどのような指摘が出されてきているか解説する。
46
(1)中央教育審議会答申 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策 について~知の循環型社会を目指して~ (答申)」平成20年2月19日
第Ⅰ部 今後の生涯学習の振興方策 第Ⅱ部 施策を推進するにあたっての行政の在り方 教育基本法に「生涯学習の理念」(第三条)が新設された後、はじめての生涯学習に関する答申。第一部、第二部の構成は・・・。 社会状況の変化等を踏まえ平成17年に文部科学大臣から、国民1人1人の学習活動を促進するための方策等について検討するよう審議会に諮問した。この議論のさなかに教育基本法が改正され、教育の目標が盛り込まれ、生涯学習や社会教育の規定の充実が図られ、この観点も併せた制度改正等、具体的振興方策の提言を行うこととなった。
47
資料P.2 (略) ○提言では、施策の方向性として大きく2つの観点から提言している。(図を説明)
○「新しい知識の必要性」とは具体的に何かというと、昨今の急速な科学技術の高度化や情報化の進展等により、新しい知識が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域で基盤となり重要性を増す、知識基盤社会の時代といわれる。知識を創造する人々への投資により、新しい技術革新等が生まれる。また、そうした知識の伝播はかつてよりも急速に世界に広がっていき、競争が進む。「知識基盤社会」においては、自ら課題を見つけ考える力、柔軟な思考力、身に付けた知識や技能を活用して複雑な課題を解決する力、他者との関係を築く力 等「総合的な知」が必要ということ。 ○地域の社会構造の変化とは具体的に、行財政改革・規制緩和が進み従来の行政サービスが縮小⇒各個人が自己責任で主体的に判断を行うことが必要となり、そのためには自立した個人の育成、自立した地域社会形成が必要ということ。 この両方を満たす生涯学習・社会教育が必要ということで、その構図は知識が循環する社会になるという提言。つまり、左側のように個人一人一人の生涯を通じた学習を支援していくとともに、その成果が社会のために活用されるよう、右側にいき、学校、家庭、地域が連携して、地域がどんな課題を抱えていてどう解決するかを共有したり、学んだり、実際に解決したりできる場を作り、社会全体の教育力を上げていくことが必要だとしている。 (参考) 生涯学習プラットフォーム…学習活動を行う上で、産業界・大学・専修学校・NPO等の民間団体等が連携して、キャリアアップ等に資する学習コンテンツの提供や学習相談を行い、学習活動を推進する地域の基盤。 ・また、持続可能な社会の構築が求められており、各個人が生産・消費や創造・活用のバランスを保ちながらそれぞれが社会で責任を果たし、社会全体の活力を持続させようとする循環型社会への転換が求められている。自らのニーズに基づき学習した成果を社会に還元し、社会全体の持続的な教育力の向上に貢献するといった「知の循環型社会」を構築することは、持続可能な社会の基盤となるとも考えられている。
48
第Ⅰ部 今後の生涯学習の振興方策について 国民一人一人の生涯を通じた学習への支援 ○多様な学習機会の提供、再チャレンジが可能な環境の 整備
第Ⅰ部 今後の生涯学習の振興方策について 国民一人一人の生涯を通じた学習への支援 ○多様な学習機会の提供、再チャレンジが可能な環境の 整備 具体的方策 (社会教育施設等を活用した多様な学習の場の充実) 地域独自の課題や公共の課題など、民間に よっては提供されにくい分野の学習支援のため、 図書館等の社会教育施設を機能強化 (相談体制の充実) 社会教育施設等において、起業や就業、ボランティア 活動、社会参加等新たなチャレンジをしようとする人 に対する学習相談や、学習機会を提供。 〇では、具体的にどのようなことに取り組んでいくのか、 「4具体的方策」で書かれている。 ○(1)「国民一人一人の生涯を通じた学習の支援-国民の「学ぶ意欲」を支える」 ための方策の、 「②多様な学習機会の提供、再チャレンジが可能な環境の整備」 において、 社会教育施設等を活用した多様な学習の場を充実することが挙げられており、 「民間事業者等によっては提供されにくい分野の学習を支援するため、 公民館、図書館、博物館、青少年教育施設、女性教育施設等の 社会教育施設等の機能強化が望まれる」ことが提言されています。 個人の趣味・教養的な学習機会の充実も必要だが、加えて、 関心が行きにくいが社会の要請があるようなコミュニティづくりとかいった分野について、個人の学習活動への関心を高める役割が期待されている。 (抜粋4ページ中央上)
49
社会全体の教育力向上 ○社会教育施設のネットワーク化 -公民館、図書館、博物館等の活用-
社会全体の教育力向上 ○社会教育施設のネットワーク化 -公民館、図書館、博物館等の活用- 具体的方策 (地域の教育力向上のための社会教育施設の活用) 地域が抱える様々な教育課題への対応、社会の要請が高い 分野の学習や家庭教育支援等、地域における学習拠点・ 活動拠点としての取組を推進することが必要。 図書館では ・レファレンスサービスの充実と利用促進 ・課題解決支援機能の充実 ・多様な情報源への入り口「地域のポータルサイト」へ ・学校図書館への支援 個人が学んだことを生かすとなったとき、では社会ではどのような課題を抱えているのか、どのように解決していくのかということを知る場であり、また解決する場としての役割が社会教育施設に求められている。乳幼児への読み聞かせボランティアの養成と活動の場の提供といった活動拠点になることも期待されているといえる。
50
施策を推進する際の留意点 3つの視点に留意すること ①「個人の要望」と「社会の要請」のバランスの視点 ②「継承」と「創造」等を通じた持続可能な社会の発展を目指す視点 ③連携・ネットワークを構築して施策を推進する視点 さらに具体的な視察を推進する際には、この3点に留意しましょうということが述べられている。
51
第Ⅱ部 施策を推進するに当たっての行政の在り方
第Ⅱ部 施策を推進するに当たっての行政の在り方 2.今後の行政等の在り方 (2)社会教育を推進する地域の拠点施設の在り方 (社会教育施設全般) ・地域課題に対応するために、関係者、関係機関で横断的なネットワークを築き、特定の機能を持たせること。社会教育施設が地域のネットワークの拠点、連携を促進するコーディネーターになること ・計画・実践・評価・改善のサイクル(「PDCA サイクル」)の着実な実施と地域住民等への情報提供 ⇒運営状況の自己評価、改善を図る努力義務、 地域住民等への情報提供についての努力義務を課すこと 第二部では、施策を推進するにあたっての行政の在り方について提言している。答申では、生涯学習振興行政、社会教育行政は図で説明したような一人一人の学習を支援する、社会の教育力の向上という二つの側面から施策を講じていくことの必要性を述べているが、施策を推進するにあたって、行政はどうあるべきかを指摘している。都道府県、市町村、国などの役割も述べているが、特に、生涯学習振興行政・社会教育行政全体として、社会教育施設をもっと積極的に活用する必要があるといっている。
52
社会教育を推進する地域の拠点施設の在り方
社会教育を推進する地域の拠点施設の在り方 (図書館) ・住民の個人的な学習支援という従来の役割に加え、地域の 課題解決、医療・健康、福祉、法務等に関する情報や地域 資料等、地域の実情に応じた情報提供サービス ・「知の拠点」として質量両面の充実 特に図書館は住民の利用も高いし、こういったことが求められるということを述べています。 1つ目は・・ 2つ目は、質量の充実として、特に未設置市町村への整備の必要性を指摘している。 「国民の学習機会の充実を図り、また社会全体の教育力を向上させる取組等を推進するに当たっては、専門的職員がその中核的役割を果たすことが期待されているのは言うまでもない。とし、司書及び司書補については、時代の要請に応じ、住民の学習ニーズに適切に対応できる能力を養うことが必要である。そのため、資格取得要件の見直しや研修の充実等が必要との指摘がなされている。 ・司書・司書補の資格要件の見直し ・研修の充実 体系的・計画的に研修体制を整備 研修関係規定の充実 ・各図書館での研修等の実施 (学習成果を活用したボランティア活動の機会の確保、図書館に関する人材の養成・研修の実施) が必要であるとの指摘がなされている。 生涯学習・社会教育の推進を支える人材の在り方 (司書等の在り方) ・司書・司書補の資格要件の見直し ・研修の充実 ・各図書館での研修等の実施
53
資料P.2 (略) この答申では、最終的に二つの新たな施策が必要であると述べている。
・一つは制度に関すること。ここで指摘された事項を踏まえて、後に社会教育法が改正されることとなった。(改正するにあたって答申出したともいえるが・・・) 社会教育法改正と法の概要については次の時間に具体的に説明します。 ・二つ目は、事業による仕組みづくりということで、地域全体で子どもの教育を行うような環境づくりを促進するような事業が必要ということで、例えば地域の方がボランティアとして指導者になり子どもの放課後の学習を支援するような事業の必要性を改めて提言。また、教育基本法第三条では、学習成果を適切に生かすことがうたわれているが、そのために学習成果をどのように評価するかという仕組みづくりの必要性を述べている。 これを踏まえて、社会教育三法(社会教育法、図書館法、博物館法)の改正の必要性が明示された。
54
(3)教育振興基本計画について (平成20年7月1日閣議決定) 教育基本法第17条に基づき政府として初めて策定した計画
(平成20年7月1日閣議決定) 教育基本法第17条に基づき政府として初めて策定した計画 教育基本法に示された教育の理念の実現に向けて、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿を明らかにするとともに、今後5年間に取り組むべき施策を総合的・計画的に推進するもの 次に、教育振興基本計画について解説する。教育基本法で新たに盛り込まれた規定に基づき策定された。これは国が示した教育全体のグランドデザインで、今後10年間を通じて目指す教育の姿とそれを実現するための具体的施策を掲げている。国としてこういう教育をしていくことを皆さんにお約束するもので国会にも報告します。
55
(参考)教育基本法 (教育振興基本計画) 第17条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的 な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本 的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本 的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなけれ ばならない。 2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に 応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に 関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
56
今後10年間を通じて目指すべき教育の姿 ①義務教育修了までに、すべての子どもに、自立して 社会で生きていく基礎を育てる
社会で生きていく基礎を育てる ・公教育の質を高め、信頼を確立する ・社会全体で子どもを育てる ②社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリード する人材を育てる ・高等学校や大学等における教育の質を保証する ・「知」の創造等に貢献できる人材を育成する。こうした 観点から、世界最高水準の教育研究拠点を重点的 に形成するとともに、大学等の国際化を推進する。 知的基盤社会の進展や国内外における競争の激化の中で、今後どのような教育が必要か、教育基本法の理念を踏まえながら今後10年間を通じて目指すべき教育の姿はとしてこの2点を挙げている。 ①は、世界トップの学力水準を目指すとともに、知・徳・体のバランスの取れた力を育てます。また、だれもが安心して子どもを学校に通わせ、優れた教員の下で教育を受けることができるようにする、社会全体で子どもを育てるとあるのは、教育の出発点である家庭の教育力を向上すること、地域が学校を支える仕組を作って地域の教育力を向上すること、これによって地域の絆や信頼関係を強くするとしている。(具体的には全国学力調査の実施、新学習指導要領の円滑な実施、免許更新制の導入、体験活動・読書活動の推進など様々)②は、グローバル化の進展等を背景としてこのような内容となっている(世界最高水準の卓越した研究拠点形成を目指して、150拠点の重点的支援や2020年を目指した留学生30万人計画など)
57
第二期教育振興基本計画の概要 (平成25年6月14日閣議決定:平成25~29年度の計画)
4つのビジョン(基本的方向性)、8のミッション(成果目標)、 30のアクション(基本施策)を掲げる(配布資料参照)。 資料P.8 (略) 社会を生き抜く力の養成 ~多様で変化の激しい社会での個人の自立と協働~ 未来への飛躍を実現する人材の養成 ~変化や新たな価値を主導・創造し、社会の各分野を牽引していく人材~ 学びのセーフティネットの構築 ~誰もがアクセスできる多様な学習機会を~ 絆づくりと活力あるコミュニティの形成 ~社会が人を育み、人が社会をつくる好循環~ 【教育行政の4つのビジョン】 ○教育振興基本計画は、5年間に取り組むべき施策を総合的、計画的に推進するものということで、第一期計画は既に終了している。今年の25年6月に、新たに第二期教育振興基本計画が策定されたところ。特徴としては、4つのビジョン、8つのミッション、30のアクションから構成しているところ。 〇その「4つの基本的方向性」は、 社会を生き抜く力の養成~多様で変化の激しい社会での個人の自立と協働~ ・個人や社会の多様性を尊重しつつ、幅広い知識と柔軟な思考力に基づき、主体的に課題を解決したり、他者とコミュニケーションし、協働したりしていく能力等が必要 → 必要な知識・能力の確実な修得に向けた条件整備が重要 未来への飛躍を実現する人材の養成~変化や新たな価値を創造・主導し、社会の各分野を牽引していく人材~ → 若い段階で海外に出て外から日本を見る機会の増加、優れた能力と多様な個性を伸ばす環境の醸成、いろいろな異能な人たちの融合を生みやすい環境の構築、多様な背景の若者たちが切磋琢磨する場の構築などが重要 学びのセーフティネットの構築~誰もがアクセスできる多様な学習機会を~ → 学習へのアクセス機会や、安全安心で質の高い教育環境の整備の確保が重要 絆づくりと活力あるコミュニティの形成~社会が人を育み、人が社会をつくる好循環~ → 学習を通じた多様なネットワーク・協働体制の確立が重要
58
第2期教育振興基本計画(図書館関係) 【基本的方向性 1】 社会を生き抜く力の養成 基本的な考え方
成果目標 3 生涯を通じた自立・協働・創造に向けた力の修得 基本施策 11 現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進 【基本的方向性 1】 社会を生き抜く力の養成 図書館関係の計画のみ簡単に紹介します。主なものでは4つほど関係部分がありますが、一つ目は社会を生き抜く力の養成に関すること。現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進ということで、基本的な考え方は○二つ目にあるように・・・。ちなみに、第二期計画には、全体に成果目標とそれに対する数値目標が盛り込まれるようになった。成果目標3に対しては、成果指標としてP.50にあるような、 ・ 現代的・社会的な課題に対応した学習を行った人の割合の増加 ・ 体験活動・読書活動の実施状況等の改善 ・ 学習成果の活用状況の改善 があげられている。 ○個々人が、社会の中で自立して、他者と連携・協働しながら、生涯にわたって 生き抜く力 や地域の課題解決を主体的に担うことができる力を身につけられる ようにする。 ○このため、現代的・社会的な課題に対応した学習や、様々な体験活動及び読書 活動が主体的な実践につながるよう、各学校や公民館、図書館等の社会教育 施設による提供のみならず、一般行政や民間等の多様な提供主体とも連携して、 推進する。 基本的な考え方
59
基本施策 18 学習や社会生活に困難を有する者への学習機会 の提供など教育支援
成果目標 6 意欲ある全ての者への学習機会の確保 基本施策 18 学習や社会生活に困難を有する者への学習機会 の提供など教育支援 【基本的方向性 3】 学びのセーフティネットの構築 二つ目は、学びのセーフティネットの構築ということで、学習や社会生活に困難を抱える方へ学習機会を提供して、教育を支援していこうという内容。図書館に関する主な取組としては、「貧困の連鎖」防止等に向けた多様な主体と連携した学習支援等が掲げられており、関係行政機関、NPO等が連携して行う地域の公民館、図書館等を活用した若者の自立・社会参画支援の取組を推進することなどが指摘されている。 ○(略)家庭の経済的格差の教育格差への影響や格差の再生産・固定化が指摘されてい ることを踏まえ、挫折や困難を抱えた子ども・若者(例えば、若年無業者、引きこもり、高 校中退者など)や非正規労働者・早期離職者が自立し、再び社会に参画できるようにす るため、福祉・労働・保健・医療行政等と緊密に連携・協力し、学習支援や体験活動の 実施、キャリアアップや学び直しの機会の提供等を行う。 (主な取組) 「貧困の連鎖」防止等に向けた多様な主体と連携した学習支援等 関係行政機関、NPO等が連携して行う地域の公民館、図書館等を活用した若者の 自立・社会参画支援の取組を推進 等 基本的な考え方
60
基本施策 20 絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた 学習環境・協働体制の整備推進
成果目標 8 互助・共助による活力あるコミュニティの形成 基本施策 20 絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた 学習環境・協働体制の整備推進 基本施策 22 豊かなつながりの中での家庭教育支援の充実 【基本的方向性 4】 絆づくりと活力あるコミュニティの形成 <基本施策 20> ○ 活力あるコミュニティが人々の学習を支え、生き抜く力をともに培い、人々の学習がコミュニティを 形成・活性化させるという好循環の確立に向けて、地域の教育資源を結びつけ、学校や公民館等を 拠点とした多様な人々のネットワーク・協働体制を確立する必要がある。 ○ (略)学校や公民館等の社会教育施設をはじめとする学びの場を核にした地域コミュニティの形成を 目指した取組を推進する。(以下略) <基本施策22> ○(略)地域や学校をはじめとする豊かなつながりの中で、家庭教育が行われるよう、親子の育ちを応 援する学習機会を充実するとともに、コミュニティの協働による家庭教育支援を強化する。 基本的な考え方 ○三つ目は、絆づくりと活力あるコミュニティの形成ということで、基本施策20のようにコミュニティづくりに向けた、社会教育施設を拠点とした学習環境・協働体制の整備推進、22のように家庭教育支援を充実していくことがあげられている。成果目標8に対しては、成果指標としてP.65に挙げられているような ・ 住民等の地域社会への参画度合の向上 (社会教育施設におけるボランティア登録者数の増加 等) ・ 全ての学校、社会教育施設で運営状況の評価や情報提供を実施 ・ 地域に向けた公開講座数や大学開放(図書館等)の状況の向上 を目指すとしている。
61
都道府県・政令指定都市・中核市における 教育振興基本計画策定状況 (平成24年3月現在)
・策定済み 43都道府県、18政令指定都市、27中核市 ・今後新たに策定、または他の計画の見直しにより策定 を予定 7件 (1)新たに基本計画を策定する予定 2県1市 (2)既存の計画の見直しにより策定する予定 1府 ・未定または検討中 1県 教育基本法第17条第二項では、地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に 応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に 関する基本的な計画を定めるよう努めなければならないとしている。全国自治体の整備状況はこちらのとおり。都道府県では43県、政令指定都市ですと、3分の2程度です。
62
自治体の教育振興基本計画もぜひ見てみてください
(参考) 全国の市区町村の策定状況 (政令指定都市・中核市を含む1720市区町村対象) 策定済み 898(52.2%) 今後新たに策定、または他の計画の見直し により策定を予定 241(14.0%) 未定または検討中 581(33.8%) こちらは市町村の状況で、策定しているのは全体の半数程度。予定があるところを含めると66%といった状況。自治体の行政計画は多様、多層にあるが、都道府県や市の総合基本計画という全体像が策定され、この中の教育部分の指針として教育振興基本計画あるいは生涯学習推進計画として策定されている。その中に図書館に関する施策がのっているかいないかというところ。従来の傾向としては、施設整備的な内容が書かれていることが多いのではないか?ソフト面の記載はあまり見ないように思うが、今後の動向は要確認。こうした計画に図書館の施策を位置付けていく働きかけは大事で、そののちの毎年の予算確保につながる。計画に書かれていることであれば、それは市政全体で了承したものなのだから、財政部局の理解も得やすいでしょう(内容によりますけれど)。 出典:文部科学省ホームページ 自治体の教育振興基本計画もぜひ見てみてください
63
(4) 「第6期中央教育審議会生涯学習分科会における 議論の整理」(平成25年1月)
(4) 「第6期中央教育審議会生涯学習分科会における 議論の整理」(平成25年1月) 第1章 今後の社会教育行政等の推進の在り方について 1.社会の変化の中で求められるもの 2.社会教育の役割 3.今後の社会教育行政の取組の方向性 4.生涯学習振興行政の調和・統合機能の強化 第2章 今後の生涯学習・社会教育の振興の具体的方策 について 5つの柱に基づく具体的方策 最後に、 「第6期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理」として、平成25年1月にまとめられた報告について紹介します。第六期というのは、第六期目の中教審生涯学習分科会が、諸課題を整理したもの。大臣からの諮問を受けて答えた答申ではなく、分科会の意見としてまとめたもの。今後の生涯学習・社会教育行政の取組について、第2期教育振興基本計画に盛り込むことも念頭に、審議をまとめた。現在は新しく第7期の委員たちがこの議論の整理を踏まえて、さらに詰めるべきところについて議論中。 構成は、第一章、第二章スライドのようになっている。
64
資料P.17
65
②多様な主体による社会教育事業の展開への対応 ③社会教育の専門職員の役割の変化への対応 取組の方向性 「自前主義」からの脱却
社会教育行政が抱える課題 ①地域コミュニティ変質への対応 ②多様な主体による社会教育事業の展開への対応 ③社会教育の専門職員の役割の変化への対応 取組の方向性 「自前主義」からの脱却 →「ひらく・つながる・むすぶ」機能の発揮 ・様々な機関との連携・協働の推進 関係行政部局 初等中等教育機関 高等教育機関 民間団体 ・連携・協働を推進するための体制の整備等 ⇒ネットワーク型行政の推進 自前主義についての指摘 依然として多くの地方公共団体では、公民館等の社会教育施設における講座等の実施を中心とした社会教育担当部局で完結した「自前主義」から脱却できないでいる。社会教育行政は、学校支援地域本部や放課後子ども教室など学校教育との連携・協働については、大きな成果をあげているものの、それ以外の領域については、多様な主体による社会教育事業との連携・協働が必ずしも十分に行えていないという現状が見られる。
66
第2章 今後の生涯学習・社会教育の振興の具体的方策について
第2章 今後の生涯学習・社会教育の振興の具体的方策について 〔図書館関係〕 1.絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた学習 活動や体制づくりの推進 (2)学びの場を核にした地域コミュニティの形成の推進 公民館等社会教育施設(学びの場)を核とした地域コミュニティ形成の推進 (4)豊かなつながりの中での家庭教育支援の充実 乳幼児期の子育て家庭を対象とした支援充実のため、図書館等の社会教育施設にお ける学習機会の提供のみならず、保健・福祉分野とも連携して多様な学習機会を提供 ここで挙げられた施策を踏まえて、先ほどの第二期教育振興基本計画が策定されました。時系列が逆になってしまいましたが、25年1月に中教審生涯学習分科会が議論をまとめて、これらの具体的方策を提案し、その内容を踏まえて(同年4月に中教審教育振興基本計画部会という計画の素案を審議する部会が答申し、)のちの25年6月に教育振興基本計画が閣議決定されたという流れになっている。構成としては、今後の生涯学習・社会教育の振興の具体的方策としては5つの柱を掲げていて、ここに挙げている3つと、その他に学習の質保証・向上と学習成果の評価・活用の推進、生涯学習・社会教育の推進を支える基盤の整備を挙げている。主な内容は配布している概要をご覧ください。図書館に関係する部分は1~3の柱で、(スライド読む)といった方策が掲げられているところ。 2.現代的・社会的課題に対応した学習機会及びライフ ステージに応じた学習機会の充実 (1)現代的・社会的課題に対応した学習の推進 ・現代的・社会的な課題に対応した学習機会の充実やその学習成果を生かした地域 課題の解決に取り組む公民館等に対する支援を行うことも有効 ・学習機会の提供にあたっては、社会教育施設での講座等の提供のみにとどまらず、 首長部局・大学等・民間団体・企業等の様々な主体とも連携・協働することが重要 3.社会生活を円滑に営む上で困難を有する者への学習機会 の充実 (1)子ども・若者への学習支援 学校や公民館、図書館等を中核として、地域若者サポートステーションなどの多様な 主体と連携・協働しつつ、子ども・若者の居場所を提供し、社会生活を円滑に営む上 で困難を有する者への学び直しや社会参画、自立を支援する体制を構築
67
まとめ 以上、大きく3つ見てきましたが、最後に最近のこれらの指摘を要約するとするならば、現在、社会教育施設においては、趣味・教養に関する講座等の提供が大半を占める中にあって、現代的・社会的な課題に対応した学習機会の充実やその学習成果を生かした地域課題の解決に向けて図書館が取り組んでいくことが期待されていること。そして、その期待に応え、学習機会や活動の場を提供していく際には、図書館だけで完結するのではなく、幅広い関係者・団体と連携していくことが重要である、というのがポイントである。連携の中心的役割を担うのが社会教育施設であり、その活動を継続していくことで学びの場を核として、失われつつあったコミュニティというものが新たに形成されていくでしょう、という趣旨とまとめられるかと思います。
68
「大学図書館の整備について」(審議のまとめ)
(平成22年12月科学技術・学術審議会学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会) (3)大学図書館に求められる機能・役割 ④他機関・地域等との連携及び国際対応 ○ 大学図書館の役割を果たすためには、学内の多様な 組織との連携の他、学外の関連機関との連携も重要。 また、MLA連携や公共図書館との連携も重要。 これまで紹介した答申等では公立図書館を想定した提言が中心になっているが、関係機関と図書館との連携ということに関して、大学図書館について1つ補足して説明させていただくと、 科学技術・学術審議会(中教審の科学版)の作業部会が過去にまとめたもので、大学図書館の整備についてという報告がある。スライドの文は概要ですが、詳細は配布資料の抜粋版をご覧いただきたい。ここで、大学図書館に求められる機能・役割として、学内のみならず学外の関連機関、公共図書館との連携の重要性について指摘している。 特に国立大学の場合には、社会・地域連携の一翼を担う組織としての位置付や社会に対して開かれた存在であるということが望まれていて。大学図書館としても一般市民に対する開放、展示会や講習会の実施など保有する情報資源や人材を活用して社会・地域連携に積極的に取り組む必要があることが指摘されているところです。 東海地区図書館協議会発足、89会員。愛知、岐阜、三重、静岡県下の大学図書館と公共図書館の会員間での資料相互利用、レファレンスサービス共同作業、研修など。 MLA連携・・・ミュージアム(Museum)・図書館(Library)・文書館(Archives)の連携のこと。それぞれの頭文字をとってMLAと呼ばれる。いずれも文化的情報資源を収集・蓄積・提供する公共機関であるという共通点を持ち、情報資源のアーカイブ化等の課題を共有していることから、近年、連携の重要性が認識されてきている。京都府立総合資料館
69
参考 ・田中壮一郎監修 教育基本法研究会編著 『逐条解説 改正教育基本法』第一法規(2007)
・田中壮一郎監修 教育基本法研究会編著 『逐条解説 改正教育基本法』第一法規(2007) ・鑓水三千男 『図書館と法』日本図書館協会(2009) ・文部科学省ホームページ「教育基本資料室」 ・同上「教育振興基本計画」 ・中央教育審議会「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策 について~知の循環型社会の構築を目指して~」(答申) ・中央教育審議会生涯学習分科会「中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理」 ・文部科学省生涯学習政策局社会教育課平成25年度社会教育主事講習資料
70
2012/9/7 (次回 意見交換) 今後の生涯学習・社会教育 「図書館による地域の課題解決支援の在り方」 「個人の要望」と「社会の要請」 に応える社会教育を担う図書館として, 皆さんの図書館では,地域をどうとらえ, どのような手法で課題解決支援を行っていますか? ①実践事例 ②疑問、必要な視点や課題 等
71
2012/9/7 公共サービス論( ) 社会教育法の概要
72
社会教育法の概要 1.社会教育法等の改正について 社会教育法等の一部改正 2.社会教育法の構成 3.主な規定の内容(総則部分)
2012/9/7 社会教育法の概要 1.社会教育法等の改正について 社会教育法等の一部改正 2.社会教育法の構成 3.主な規定の内容(総則部分) 〇社会教育法の概要についてお話します。 はじめに社会教育法は先ほど説明した改正されました。はじめに改正の内容、次に法の構成、総則を中心とする主な規定の内容について概要を見ていきます。
73
1.社会教育法等の一部改正 改正の概要(配付資料参照) 国会で議論になったこと 附帯決議 人材確保、適切な管理運営体制構築、地域間 格差解消
2018/1/21 1.社会教育法等の一部改正 改正の概要(配付資料参照) 国会で議論になったこと 附帯決議 人材確保、適切な管理運営体制構築、地域間 格差解消 運営状況の評価は、可能な限り外部の視点を入れる。評価結果の公表 司書等の専門的能力・知識等の習得への配慮、有資格者の活用方策の検討 ほか 〇答申や、教育基本法改正を踏まえ、具体的にどのような法改正が行われたか見ていく。図書館法については、今後別の機会に詳しく解説する。 ・改正の概要(次スライドで説明)、国会で議論になったこと(後述) ・附帯決議 〇国会で議決された法律案などに関して、施行に当たっての意見や希望などを表明する決議。法的拘束力は有しない。 〇衆議院、参議院の両方で、付帯決議がなされた。 ・社会教育施設における人材確保とその在り方について検討すること、適切な管理運営体制の構築(指定管理者制度導入の弊害にも配慮。例・継続性等)、地方公共団体の取組における地域間格差を解消し、円滑な運営を行うことができるよう様々な支援に努めることとしている。 ・本改正で盛り込まれた評価実施、改善措置の努力義務に関して評価に可能な限り外部の視点を入れる。評価結果の公表 等に努めることが指摘された。評価のガイドラインを国が示すこと、なども。 ・司書等の専門的能力・知識等の習得への配慮、有資格者の活用方策の検討 など 〇これらに留意しつつ、新しい法律に則り、施策を進めているところ。
74
2012/9/7 ・改正の概要 ○(一つ目)教育基本法改正を踏まえた改正としては、教育基本法で、生涯学習の理念が新たに規定されたことを踏まえて第三条「国及び地方公共団体の任務に関する規定」の第2項に、生涯学習の振興に寄与することとなるよう努めることが定められた。 ○教育委員会の事務として、学習成果を活用して学校等において行う教育活動の機会を提供する事業や、放課後に学校等において児童及び生徒に対し学習活動の機会を提供する事業、家庭教育に関する情報提供に関する事務を追加した。 ○図書館及び博物館が行う事業にも、学習の成果を活用して行う教育活動の機会を提供 する事業等が追加された(図書館法第3条第8号 ほか)
75
2012/9/7 〇「Ⅱ.社会教育施設の運営能力の向上」を趣旨とした改正としては、運営の状況に関する評価等や情報提供に関する努力義務規定が設けられた。 〇また、図書館法について、旧図書館法では「公立図書館の設置及び運営上望ましい基準」を定めることが規定されていて、それまでは公立の図書館のみ対象としていたものを、本法改正によって、私立も含めた図書館の基準を作ることが規定された。 Ⅲ 専門職員の資質の向上と資格要件の見直し ○文部科学大臣及び都道府県教育委員会は、司書及び学芸員等の研修を行うことが努力規定として盛り込まれた。 ○中教審の答申を踏まえ、多様な人材を確保する観点から、司書の資格取得要件の見直しが行われ、社会教育施設における実務経験として認められる条件を増やしたり、司書資格を得るために大学において履修すべき図書館に関する科目を定めることを盛り込んだりした(これまでは、盛り込まれていなかった。司書講習の規定を準用していた)。
76
2018/1/21 国会で議論になったこと(図書館法関係) 司書の配置増 過疎地や町村部での図書館整備の促進 館長の司書資格について 公の出版物の収集(第9条)について 司書養成科目の改正について 指定管理者制度の導入について 等 ○法改正の際に、国会でどのような議論が行われたかについて触れておく。 国会議員がどのような点に関心を持っているか。 ・司書の配置増・・・数値を盛り込んだガイドラインで示したら?という議員の指摘(答弁:地方の判断の尊重、財政負担の観点から慎重に検討する必要がある議題) ・館長の司書資格・・・2割程度の司書率だが(答弁:望ましい基準で定めている。過去の補助金要件削除した経緯) ・公の出版物・・・無料で提供できるはずなのに購入しているところが多いという指摘(答弁:趣旨の徹底に努力する) ・指定管理者制度の導入・・・経費削減が人件費カットにつながっている、契約する会社が安定した長期雇用が保障されていないために短期で人が入れ替わる弊害、実態把握しているのか?(答弁:当時は導入率が1.8%だったので、難しいのかなと答弁していますが・・・。懸念が生じないようにしてもらいたい) ○法改正にあたって、他の施設や事業に比較して、図書館に関する質問の比率が高かった。国民の関心が高いといえる。 ○地方議会でも同じだと思うが、関心を持ってもらうためには、日ごろから施策について、 議員にこまめに説明に行くことが必要。図書館法については、日本図書館協会が 議員に意見書を配布する(改正内容の問題点の指摘ではあったが)など、 文科省とは別のところからのアプローチがあったこともあり 社会教育における重要な施設として注目してもらえた。 図書館協議会や、利用者団体などと連携して、市民の声を議員へ届けることが大切。
77
2012/9/7 2.社会教育法の構成 第一章 総則 第二章 社会教育主事及び社会教育主事補 第三章 社会教育関係団体 第四章 社会教育委員 第五章 公民館 第六章 学校施設の利用 第七章 通信教育 〇社会教育法は、7章立てで構成されています。 〇第1章「総則」では、この法律で規定する社会教育の定義、国と地方公共団体の任務、教育委員会の所掌事務、教育委員会と地方公共団体の首長との関係、図書館、博物館の位置づけなどについて規定しています。 〇第2章は「社会教育主事及び社会教育主事補」について 〇第3章は「社会教育関係団体」の活動を、 〇第4章の「社会教育委員」では、その職務等を明確にしています。 〇第5章は、「公民館」についてです。地域において公民館が果たす役割や活動などを規定しています。 〇第6章は、社会教育活動のための「学校施設の利用」 〇第7章は、「通信教育」などについての原則が示されています。
78
2012/9/7 3.主な規定の内容(総則部分) 第一章 総則 第一条 法律の目的 第二条 社会教育の定義 第三条 国及び地方公共団体の任務 第四条 国の地方公共団体に対する援助 第五条 市町村の教育委員会の事務 第六条 都道府県の教育委員会の事務 第七条 教育委員会と地方公共団体の長との関係 第八条 必要な資料の提供その他の協力 第九条 図書館及び博物館 ○本講義では、図書館に関連する部分として、総則を中心にお話していきます。総則は具体的にこのような内容になっている。
79
2012/9/7 (この法律の目的) 第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年 法律第百二十号)の精神に則り、社会教育に 関する国及び地方公共団体の任務を明らか にすることを目的とする。 「教育基本法の精神」教育基本法は、教育の根本、目標を示すものであり学校教育と源を同じくするということ。教育基本法12条で定める、国、地方自治体が任務として行う奨励の範囲を定めることを目的としている。
80
(参考)教育基本法第12条 国や地方公共団体により社会教育が奨励されなければならない旨を明記。
(社会教育) 第12条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会に おいて行われる教育は、国及び地方公共団体 によって奨励されなければならない。 教育基本法ではこのように定めています。
81
2012/9/7 「社会において行われる教育」 単に公の機関の行う活動のみを指すのではなく、広く社会一般において行われる教育的活動をも指称する概念 ↓ 社会一般において行われる教育的活動は、内容も方法も多種多様で、これを一律に法律でとらえることは困難。しかし社会教育は国家的関心事。 この社会において広く行われる教育とは、単に公の機関の行う活動のみを指すのではなく、広く社会一般において行われる教育的活動をも指称する概念です。 ↓ 社会一般において行われる教育的活動は、その内容においても方法においても多種多様で、これを一律に法律でとらえることは少なからず困難。しかし社会教育は国家的関心事。
82
この社会教育の例示に限らず、幅広くとらえられるものです。
83
2012/9/7 社会教育法とは 「民間において行われる多種多様の社会教育については、各人の自主性と創意・工夫に委ねることとし法の枠外の問題とし、」 「国家的関心事としては、社会教育について、国・地方公共団体の機関はどのようにしてその振興を図るべきか」 「民間の社会教育活動についてはどのような態度で臨むべきか或いは助成すべきかその任務について明らかにすることを目的とする」 社会教育法の基本的立場というのは、(スライド読む)。つまり民間の社会教育にまで規制をかけるものではない。二つ目、三つ目に法の立場をとっている。 宮地茂(1959)
84
2012/9/7 社会教育法とは ①積極的に国・地方公共団体が自ら社会教育振興のために遂行すべき活動 ②民間の社会教育活動の助成にあたって国・地方公共団体がとるべき措置 について規定。 =社会教育に関して最小限、国家的関心事となる 範囲においてのみ規定する。 (スライド読む)つまり、教育基本法でいうところの、「国・地方公共団体によって奨励されなければならない」とするその行政的な範囲を規定しているのがこの社会教育法。
85
2012/9/7 (社会教育の定義) 第二条 この法律で「社会教育」とは、学校 教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に 基づき、学校の教育課程として行われる 教育活動を除き、主として青少年及び成人 に対して行われる組織的な教育活動 (体育及びレクレーションの活動を含む。)を いう。 〇そして第2条では、社会教育を定義しています。
86
国や地方公共団体が社会教育活動に行政としてかかわる限度において、その内容と範囲を示したもの
2012/9/7 本法における「社会教育」の定義(第2条) 国や地方公共団体が社会教育活動に行政としてかかわる限度において、その内容と範囲を示したもの 学校の教育課程として行われる教育活動 を除く ②主として青少年及び成人を対象 ③組織的な教育活動 ④体育及びレクリエーションの活動を含む ○①点目として、学校の教育課程として行われる学校教育活動を除外 するということ ②点目として、主として青少年及び成人に対するもの ③点目として、組織的な教育活動であること。従って、偶発的なものではなく、日常生活の中で、ある程度、計画的、継続的な組織的な教育活動と言うことになります。 ④点目として、体育及びレクリエーションの活動も含むこと ○この法律でいう「社会教育」を以上のように定義しています。 この「社会教育」の定義は、法の目的と先述の説明のとおり、世の中の全ての社会教育活動を定義するものではなく、国や地方公共団体が社会教育活動に行政としてかかわる限度において、その内容と範囲を示したもの。
87
厳密な年齢区分を指すものではなく、社会に
2012/9/7 ②「青少年及び成人」 厳密な年齢区分を指すものではなく、社会に あるすべての人を対象とすることを表明する と解される ③「組織的な教育活動」 日常生活の中である程度、意図的、計画的、 継続的な組織的な教育活動 「組織的な」(≠ 偶発的なもの) ②青少年については、本法上の年齢区分を指すものではないと解されている(宮地)。学齢児童であっても、学校教育の分野外において社会教育の対象となりうる。 ちなみに少年の定義は、少年法で20歳未満、児童福祉法では18歳未満は児童と定義されている。青少年育成施策大綱では「青少年」をおおむね30歳未満を対象としていたり、法令上の定義も一様ではない。 ③組織的な教育活動とは、日常生活の中である程度、意図的、計画的、継続的な組織的な教育活動と解される。偶発的なものなどはここでの定義には含まれない。「組織的」の言葉の意味は「共通の目的の下に全体が一定の秩序を持っていることと」等と一般に理解される。(この法律でいうところの定義、という意味。教育基本法に見ると本来もっと広いもの) (参考) 民法第三条成人満20歳、少年法第二条20歳未満「少年」 児童福祉法第四条満18歳未満「児童」 第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。 一 乳児 満一歳に満たない者 二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者 三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者 「青少年育成施策大綱」(平成15年12月9日 青少年育成推進本部決定)「青少年」おおむね30歳未満の者を対象 「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」「青少年」18歳に満たないもの。青少年健全育成条例などでもさまざまのようです。
88
国及び地方公共団体の任務(第3条) 第三条 国及び地方公共団体は、この法律及び他の 法令の定めるところにより、社会教育の奨励に必要な
2012/9/7 国及び地方公共団体の任務(第3条) 第三条 国及び地方公共団体は、この法律及び他の 法令の定めるところにより、社会教育の奨励に必要な 施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布 その他の方法により、すべての国民があらゆる機会、 あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的 教養を高め得るような環境を醸成するように努めなけれ ばならない。 ○第3条は、 ・国及び地方公共団体の任務を包括的に示した、いわば、この法律の要点とも言うべきなのが第1項です。 ○第1項ですが、前半では任務を果たすための方法・手段が示されています。そして、後半は、その際の基本的な視点や、有り様を明らかにしています。後半部分、社会教育行政は「すべての国民」に対するサービスであります。また、社会教育は「あらゆる機会、あらゆる場所」とあり、学校、家庭、地域社会それぞれが互いに協力して、総合的に、社会教育を行う環境の醸成に努めていくことが必要とされています。 ○自ら、環境の醸成とありますが、国民自身の自主的活動を助長するということに努めるということ、「実際生活に即する」とは実際の生活に適合したということ、育なり、学問なりが実際生活を基礎とし、そこから出発して行われなければならないし、またその成果も実際の生活に浸透していかなければならない、という意味を示したもの。 ○「文化的教養」とありますが、「文化」とは、人が自然に手を加えてできた物質的なものや精神的なものと広くとらえられていて、衣食住を初めとして、技術、学問、芸術、道徳、宗教、政治など、様々な人間の生活を形作る基本的な教養のことを言っています。個人の余暇的・娯楽的教養に限らず、職業上必要な専門的・技術的な知識や技術など、幅広いものを指します。 ○具体的にはどのような方法で行うのか?これらのように法で例示されています。ここでいう社会教育に必要な施設に図書館が該当します。 前半・・・方法・手段 後半・・・基本的視点、ありよう 「自ら」 「環境の醸成」⇒ 国民自身の自主的活動の助長 「実際生活に即する」⇒ 実際の生活に適合する 「文化的教養」⇒ 人間の活動を支え、培う基本的教養
89
国及び地方公共団体の任務(第3条) 第1項の任務を行うに当たって、次の点に努めることを規定 (第2項新設、第3項充実)
2012/9/7 国及び地方公共団体の任務(第3条) 第1項の任務を行うに当たって、次の点に努めることを規定 (第2項新設、第3項充実) (第2項)国民の多様な学習に対する需要を踏まえ、必要な 学習機会を提供・奨励を行うことにより、生涯学習の 振興に寄与することとなるよう努める。 そして第三条はさきほどの第一項に加えて、その任務を行うに当たって生涯学習の振興に寄与することとなるよう努めることを規定した第2項、 家庭教育の向上や学校、家庭及び地域住民との連携協力に関する配慮事項を規定した第3項からなります。これらは、教育基本法の改正を受けて追加されたもの ○第2項は、教育基本法の第3条の「生涯学習の理念」の規定を踏まえて新たに加えられた条文であります。 ○なお、「国民の学習に対する多様な需要を踏まえ」とは、学習者の視点から、多様な学習ニーズに配慮することの重要性を特に規定したものであります。 ○第3項は、社会教育が学校教育や家庭教育と密接な関連性を有していることを明示するとともに、学校、家庭、地域社会の連携協力に努めることを規定しています。 ○こちらも改正後の教育基本法で「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」が規定されたことを踏まえて、下線部が新たに加えられて、規定の充実がはかられています。 (第3項)学校教育との連携の確保に努め、及び家庭教育の 向上に資することとなるよう必要な配慮をするとともに、 学校・家庭・地域住民等の連携協力の促進に資する こととなるよう努める。
90
国(第4条) 市町村教育委員会(第5条) 都道府県教育委員会(第6条)
2012/9/7 役割分担 国(第4条) 市町村教育委員会(第5条) 都道府県教育委員会(第6条)
91
2012/9/7 社会教育における国の役割 第四条 国は、(中略)地方公共団体に対し、 予算の 範囲内において、 財政的援助並びに物資 の提供及びそのあっせんを行う。 「財政的援助」・・・補助金等 「物資の提供及びそのあっせん」 ・・・臨時物資需要調整法(当時) ・・・社会教育に要する資料、機械、器具の提供等 財政的援助は、具体的には補助金等のことです。「物資の提供及びあっせん」(あっせん・・・ある物や人を求める人に紹介すること) 戦後、「臨時物資需要調整法」により、物資の指定統制が行われていた。文部省の施設部が教育関係の必要物資についてその確保を援助する任務を担っていたので、この規定が実益あるものであったが、既にその法が失効しているので、指定配給物資・・・ゴム靴、地下足袋、炭等 文部省のあっせん物資・・・クレヨン、消しゴム、鉛筆 現在、実体のないものとなっている(削除すればよいのだ)が、その後の解釈として、1952~56年文部省で教育映画を製作・各都道府県へ配布、1957年以降青少年活動事業として、(製作は中止したが)無償配布するような事業を行っており、映写機の貸与等も行っていたこともあり、そういった教材配布等もここに含められると解される。
92
国の教育行政の在り方 中央教育審議会 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(答申)」
2012/9/7 中央教育審議会 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(答申)」 国の教育行政の在り方 生涯学習振興行政・社会教育行政における国の役割 ・基本的な方針等の策定 ・取組に係る情報収集及びその提供 ・様々な生涯学習及び社会教育のための機会の整備充実 ・制度の改善 ○実際のところ、現在、社会教育における国の役割は予算の範囲内で財政的援助を行うといっても、第4条だけですと若干わかりにくいかもしれません。昔から残している規定ですが、現在は地方分権という流れがあり、地方でできることは地方でという考え方がある。国の在り方については、財政支援というよりもスライドのようなことが指摘されてきている。 昔は社会教育施設を整備する補助金や活動支援の補助金を国から交付していたが、施設の整備がある程度進んだことや地方分権の流れから、全国全ての図書館を対象にした補助金をばらまき的に交付するということはまずなく、こうした国の役割を踏まえた財政的援助、例えば他の図書館の参考となるような先導的な取組を実証的に行う図書館を支援する事業を行い、その成果を普及するという形で地方自治体等の取組を支援する形となっている。 (指摘事項) 「全国的な観点から今後の方策について基本的な方針等を策定」 「各地方公共団体における取組に係る情報収集及びその提供」 「様々な生涯学習及び社会教育のための機会の整備充実」 「これらを推進するための制度の改善等を図ること」等 生涯学習振興行政・社会教育行政における国の役割は、各地方公共団体における多様な実情を可能な限り踏まえつつ、全国的な観点から今後の方策について基本的な方針等を策定し、地方公共団体における施策の参考となるよう努めること、各地方公共団体における取組に係る情報収集及びその提供、様々な生涯学習及び社会教育のための機会の整備充実やこれらを推進するための制度の改善等を図ること等が考えられる。
93
(参考)生涯学習・社会教育行政における国の主な役割 (中教審答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」などより)
2012/9/7 (参考)生涯学習・社会教育行政における国の主な役割 (中教審答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」などより) 1.全国的な観点から今後の方策について基本的な方針等の 策定、制度改正 2.基本的なデータの収集、指標の開発 3.地方自治体等における取組の参考となる情報の収集や その提供 4.現代的課題への対応としての先導的な取組みへの支援、 ネットワーキング 5.ナショナルセンターの運営(放送大学、国立科学博物館、 国立女性教育会館 等) 6.学習の質の保障・学習の成果の評価とその場の提供 文部科学省HP(中央教育審議会生涯学習分科会(第60回)配布資料3-2)
94
市町村(特別区)の教育委員会の事務(第5条)
2012/9/7 市町村(特別区)の教育委員会の事務(第5条) 第五条 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、 社会教育に関し、当該地方の必要に応じ、予算の範囲内に おいて、次の事務を行う。 「予算の範囲内において」 ・・・「社会教育施設は義務設置ではないため、財政上の関係から 設置しえない市町村もあるので、これらの事業を財政面から義務づけたのではないという念のための規定。」 (宮地) 「予算がなければ列挙された事務は全部どれもしなくともよい として全くの任意事務のごとく解するのは法の趣旨ではない」 ○第5条 ○この条文では、市町村の教育委員会の行うべき社会教育の仕事を列記しています。法律にありますように、社会教育委員に関すること、社会教育施設に関すること、各種の社会教育の事業に関すること、必要な設備、器材、資料の提供や、情報の交換、調査研究に関すること等で広範にわたっています。 「「予算の範囲内において」 ・・・「社会教育施設は義務設置ではないため、財政上の関係から設置しえない市町村もあるので、これらの事業を財政面から義務づけたのではないという念のための規定。」 (宮地) 「予算がなければ列挙された事務は全部どれもしなくともよいとして全くの任意事務のごとく解するのは法の趣旨ではない」
95
2012/9/7 (主な内容) ・ 社会教育に必要な援助 ・ 公民館、図書館、博物館、青年の家等の社会 教育施設の設置及び管理 ・ 講座の開設及び討論会、講習会、講演会、展示 会等の集会の開催、奨励 ・ 青少年に対する体験活動の機会提供、奨励 ・ 社会教育に関する情報の収集・整理・提供 ・ 視聴覚教育、体育等に必要な設備、器材、資料の 提供 ○主なものは(全てでは無いので注意) ちなみに、公民館の設置及び管理に関することは、市町村教育委員会のみ。第二十一条 で公民館は、市町村が設置する。市町村が設置するとなっているので。
96
2012/9/7 ・ 情報化の進展に対応して情報収集・利用を円滑・適正に行うために必要な知識又は技能に関する学習機会を提供するための講座の開設等、奨励 ・ 家庭教育に関する学習機会を提供するための講座の開設、情報提供 ・ 児童生徒を対象に授業終了後、休業日に学校、社会教育施設その他適切な施設を利用して行う学習その他の活動機会の提供、奨励 ・ 社会教育での学習の成果を生かして学校や社会教育施設等で行う教育活動等の機会の提供 ⑧情報化の進展に関すること ⑨家庭教育に関する情報の提供、 ⑩児童生徒を対象に学校で放課後に行う学習機会の提供、 ⑪社会教育での学習の成果を生かして学校や社会教育施設等で行う教育活動等の機会の提供 などが主な事務の内容です。 この最後のスライドの赤字の事務は、平成20年の改正で追加されたことです。 ・一つ目の情報化の進展に対応して、情報通信技術のみではなく、情報及び情報伝達手段を主体的に選択し、活用していくための基礎的な能力や態度等、情報活用能力やモラルを身に付けること、有害情報対策が必要となっているので、地域におけるこれらの学習機会の提供に関する事務を追記した。 ・三つ目は、子どもを巻き込む犯罪や事件が続発する中で、児童生徒が放課後や休業日に、学習等を行うための安全な居場所の確保が必要であることから、学校や社会教育施設等を利用して学習その他の活動提供の事務について規定したもの。学習には、予習、復習、補習、その他の活動は、スポーツや文化芸術活動、大人や異年齢の子どもとの交流活動などある。実際に、国で推進している事業が あり、「放課後子ども教室」事業として、学校等で放課後や休日にこうした活動を地域のボランティアが主体となって提供する事業が全国で展開されている。次週詳しく説明する。 前のスライドやこのスライドで、情報提供の事務が加えられているのは、教育基本法の改正で、第12条の社会教育振興の手段に情報の提供が加えられたことを受けています。 ・四つ目の学習の成果を生かして行う教育活動も、個人が社会教育における学習機会を通じて得た知識や技能等を指すものであるが、これを生かして学校における教育活動等を支援するような事業が想定される。これについて、少し補足します。
97
(参考)学習成果の活用とは 引用文献: 浅井経子. 学習成果の活用とその支援.. 2009,八洲学園大学紀要第5号, P25-33
2012/9/7 (参考)学習成果の活用とは 学習成果の活用については、具体的にはこのような事例が考えられている。 このうち、3の地域社会の発展に生かすとありますが、この点が社会教育行政としてかかわっていくところかと思います。 引用文献: 浅井経子. 学習成果の活用とその支援 ,八洲学園大学紀要第5号, P25-33
98
・第5条各号(公民館の設置管理除く)の事務 ・公民館及び図書館の設置及び管理に関し、必要な指導及び調査
2012/9/7 都道府県の教育委員会の事務(第6条) ・第5条各号(公民館の設置管理除く)の事務 ・公民館及び図書館の設置及び管理に関し、必要な指導及び調査 ・社会教育を行う者の研修に必要な施設の管理・ 運営、講習会の開催、資料配布等 ・市町村との連絡 等 その他 ・自ら広域的な社会教育施設を設置運営すること (県立図書館など) ・広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの、 規模等において市町村が処理すると適さないもの 等 ○第6条は、都道府県教育委員会の事務について規定しています。 スライドにあるようなことですが、この他にも県立図書館などの設置運営があげられます。また、第6条第5項にその他法令によりその職務権限に属する事項とあるのは、地方自治法第2条で広域にわたるものといった規定に該当することを指しています。公民館は市町村が設置すると定められているのでのぞかれている。
99
2012/9/7 社会教育行政における都道府県の役割 (参考)生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」(平成10年) 1)都道府県は、市町村事業との重複を避けつつ市町村の社会教育行政の基盤となる中核施設の運営、指導者の養成研修、学習情報の提供、都道府県レベルの社会教育計画の策定、モデル事業の実施を行うこと。 2)広域連携のコーディネイト機能を充実し、各市町村の連携を促進するとともに、市町村と連携して、広域的な学習サービスの提供のための体制を整備すること ○平成10年に出された生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」では、社会が大きく変化し、多様な学習ニーズが生じていることや生活圏域が広域化している実態などを踏まえて、都道府県の社会教育行政について次のように提言をしています。 1)都道府県は、市町村事業との重複を避けつつ市町村の社会教育行政の基盤となる中核施設の運営、指導者の養成研修、学習情報の提供、都道府県レベルの社会教育計画の策定、モデル事業の実施を行うこと。 2)広域連携のコーディネイト機能を充実し、各市町村の連携を促進するとともに、市町村と連携して、広域的な学習サービスの提供のための体制を整備すること 3)~次ページ
100
3)住民の活動範囲の広域化や、学習の内容・レベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等を行うこと
2012/9/7 3)住民の活動範囲の広域化や、学習の内容・レベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等を行うこと 3)住民の活動範囲の広域化や、学習の内容・レベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等を行うこと ちなみに、当時のこの答申では、社会教育行政は、生涯学習振興行政の中核として学校教育や首長部局と連携してネットワーク型の仕組みを構築する必要があること、また、生涯学習施設間や広域市町村間の連携に努めることといったことが提言されています。ネットワークを構築するためには、国、地方公共団体、大学・研究機関、民間団体等に存在する人・もの・情報等に関する学習資源を調査、収集し、その学習資源を有効に活用できるようにすることが必要である。このため、国は、学習資源の開発を効率的に進めるため、地方公共団体間のネットワーク化を促進し、また、地方公共団体は、人々に直接学習資源を提供するだけではなく、ネットワーク参加機関、施設、団体等がそれぞれ役割を果たせるような環境を整備していくことが求められる、としている。このネットワーク行政の考え方は、平成20年の答申や昨今の分科会の議論にも受け継がれている。都道府県あるいは市町村の役割として、とらえる必要があることがらといえます。 (参考)ネットワーク行政の必要性 社会教育行政は生涯学習振興行政の中核として、学校教育や首長部局と連携して推進する必要がある。また、生涯学習施設間や広域市町村間の連携等にも努めなければならない。
101
第九条 図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする。
2012/9/7 (図書館及び博物館) 第九条 図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする。 図書館及び博物館に関し必要な事項は、別に法律をもって定める。 ⇒ 図書館法、博物館とも、第一条に「社会教育の 精神に基づき」と規定。 ○第9条では、図書館及び博物館が社会教育施設であることを規定しています。 ○図書館法は昭和25年、博物館法は昭和26年にそれぞれ制定されました。 ○両方とも、それぞれ第1条に「社会教育法の精神に基づき」と規定され、3つの法律が一つの精神によって貫かれていることを求めています。
102
2012/9/7 2.社会教育法の構成 (再掲) 第一章 総則 第二章 社会教育主事及び社会教育主事補 第三章 社会教育関係団体 第四章 社会教育委員 第五章 公民館 第六章 学校施設の利用 第七章 通信教育 社会教育法については、以上簡単に説明しましたが、第二章以降、社会教育主事、社会教育関係団体、社会教育委員、公民館とそれぞれ規定されています。講義で逐条解説はしませんが、来週、社会教育施設・職員の現状ということで、公民館や博物館がどんな活動をしているのか、社会教育主事とはなど、説明していきたいと思います。
103
2018/1/21 参考 ○社会教育法等の改正関連資料(概要、法律、新旧対照表 他) ○生涯学習分科会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」(平成10年) ○井内慶次郎、山本恒夫、浅井経子 『社会教育法解説』財団法人全日本社会教育連合会(2008年) ○宮地茂 『改正社会教育法解説』全日本社会教育連合会(1959年) みやじしげる 社会教育法 昭和34年改正法時の社会教育課長 井内慶次郎 文部省元事務次官、日本視聴覚教育協会会長
104
2012/9/7 (次回 意見交換) 今後の生涯学習・社会教育 「図書館による地域の課題解決支援の在り方」 「個人の要望」と「社会の要請」 に応える社会教育を担う図書館として, 皆さんの図書館では,地域をどうとらえ, どのような手法で課題解決支援を行っていますか? ①実践事例 ②疑問、必要な視点や課題 等 では、本日の講義は以上です。
Similar presentations
© 2025 slidesplayer.net Inc.
All rights reserved.